手術の時、患者さまが手術室に入って手術台に座っていただいた後に『お名前を教えてください』『今日の手術はどちらの眼ですか?』と確認をさせていただいております。
もしかすると、『今更、そんな確認するのか?』と感じる患者さまもいらっしゃるかもしれません。
当院では手術の際、お一人お一人、時間をお伝えし、時間差でご来院いただき、手術室に入る前には準備室(リカバリールーム)に入ってお待ちいただきます。
準備室にもお名前を確認して入っていただきますが、手術前の患者さまはお一人しか入らないようにしていますので、その後、手術室に入る時に人間違いが起こることは無いようになっています。
人間違いは基本的に100%ないようになっていますが、眼科の手術で起こりうるのは、どちらの眼を手術するかの間違いや白内障の手術であれば、入れるレンズの種類、度数の間違いの可能性です。
というのも、実は僕は前の病院に勤めていた時に、白内障の手術でレンズの間違いを経験してしまっています。
手術の時に、お名前とレンズの度数を確認して、そのレンズを入れましたが、翌日の診察で近視の度数が予定より大幅にズレてしまっていました。なぜかすぐには気づかなかったのですが、数日後にカルテを見直していた時に、レンズ度数の計算のデータが他の患者さまのもので、そのミスが原因でした。
その患者さまにはすぐに電話で連絡をし、その事実を伝え間違いを謝罪し、直接、お会いしてご説明と謝りたい旨をお伝えしましたが、その患者さまからは『治してくれればいい』とおっしゃっていただき、再手術でレンズを取り出し、本来のレンズを入れさせていただきました。
本来、起こってはいけないことですし、100%僕の過失ですが、それを責めるでもなく、信頼して再手術を受けてくださったことはとてもありがたいことですし(なかなかできることではないと思います)、この間違いの経験は、もう二度と起こしてはいけないと、絶対に今後に活かさねばと強く思いました。
それ以来、手術室では患者さまにお名前と手術する眼をおっしゃっていただき(こちらから〜さんですね?〜眼ですね?と確認してしまうと、緊張している患者さまは間違っていても『はい』と答えてしまうこともあるため、患者さまからおっしゃっていただいています)、レンズ計算の用紙もその患者さまのデータであることを確認し、その日の手術の眼のレンズを手術室のスタッフと必ず二人でダブルチェックで最終確認しています。一人で99.99%間違いがなくとも、二人で確認することでその可能性を限りなくゼロに近づけています。
医療に絶対ということはないのかもしれませんし、何かが起こる可能性はゼロではないと思っていますが、人為的なミスや間違いが起こる可能性を極力ゼロに近づける最大限の努力はしなければと思っています。当たり前のことかもしれませんが、その当たり前をきちんとすることが大切だと思っています。
今、手術自体はかなり安全に行えるようになっていますが、人為的なミスも絶対に起こさないつもりで手術をしています。
そのためには、確認で患者さまのご協力いただくことがありますが、とても大切なことですので、どうかご協力よろしくお願いいたします。
前の病院でレンズ間違えをしてしまった患者さまは旭区の歯科の先生でした。
退職以来お会いできていませんが、お元気でしょうか?
先生にご迷惑をおかけしてしまった経験を絶対に無駄にしないようにと思っています。本当にありがとうございました。
↑白内障手術前の確認風景