先日、千葉大病院で『乳がんの患者さんが間違いでがんの無い乳房まで切除された』という報道がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/85871783a0bc237530ccf80252e8b2eb2b46d8e5
いわゆる『医療事故』ですが、ちょうど数日前に僕も医療のミスについてブログを書いていました。
この報道のコメントを見ると
・あってはいけないこと
・ありえない
・医者が間違うなんて信じられない
という内容が目立ちました。
確かにこんなことはあってはいけないです。あってはならないと思うのは医療を受ける側も提供する側も当然だと思います。
でも、ありえないことでは決してないとも思います。もちろん大小はありますが、医者が間違うことがないなんて、むしろありえないことだと思います。
なんて言うと、『こんな医者は信じられない!』と思われてしまうかもしれませんが、僕は自分が間違える可能性もあると疑いながら、本当にこれでよいか、大丈夫かは常々考えているつもりですし、もし万が一、間違えても問題になる前に気づける、手遅れにならない体制・システム作りが重要だと思っていて、自分のクリニックではそうしているつもりです。
医療機関ではチェック機構があり、通常は複数人で確認を行いながら、医療行為を行っていきます。この千葉大の医師は検査の結果を左右間違えて治療を進めてしまったようですが、最初の始まりを間違えてしまうと、それが前提(その間違いの方)で確認がなされ、全て終わってから左右が違う!ということになってしまったのではと思います。
つまり、この医師が例えば、本当は左の乳がんなのに『右の乳がんです』と診断してしまうと、患者さんにもそう伝えられ(症状がなければご自身でもそうだと信じることになると思います)、手術の申込みや同意書、確認書類等も全て(本当は間違った)『右』で進み、途中途中で確認しながらも、最終的に『右で間違いない』(本当は間違っていますが)状況で手術してしまったのではと思います。(あくまで推測ですが)
当院では僕が手術の指示を出す訳ですが、もちろん、患者さまにもなるべく画像を示し、説明した上で手術の申込みをいただきます。白内障や網膜の病気にしても、目の病気なので自覚症状がある場合が多いですが、時には自覚症状が無い病気もあります。なので、極力、画像を一緒に確認し、どちらの眼の手術(治療)になるかを必ずご理解いただいた上で手術の手続きを進めるようにしています。
また、ダブルチェックとして、手術申込みの手続きを担当するスタッフにはカルテの所見上、手術する眼が間違いないか、矛盾がないかを確認するようにさせています。一連の流れの、このスタートを正確に行うことがとても大切だと思っています。
自己擁護する訳ではありませんが、医者も人間で絶対は無いと思っています。間違いが絶対無いようにと思っていることも大切ですが、例えその可能性が低くとも間違いがあることも考え、それが問題に(患者さまの害に)ならないでリカバリーできる体制作りが重要だと感じています。一人の注意では1000回に1回ミスが起こるとしても、二人で確認すれば、その確率は100万回に1回となりますし、クリニックとして限りなくゼロに近づける努力が大切だと思っています。
それと、もし、患者さまの側でもあれ?っと思ったら遠慮なくおっしゃっていただくことも重要かと思います。医者のことを信じることで治療がうまくいくことも多いですが、時には疑うというか、おかしい?と思ったことや疑問に感じたことをちゃんと聞くことでよりよい医療につながると思いますし、自分の身は自分で守る気持ちもあった方がよいと個人的には思っています。もちろん、当院での対応でそう感じることがあれば、遠慮なくおっしゃっていただきたいと思いますし、なるべくそう思わないでいただけるよう、しっかり診療していかねばと思っています。
ということで、僕らもこのような事件は他人事と思わず、一層気を引き締めて、より安全な医療を提供してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。