当院に通院中の患者さまで昨年6月に多焦点レンズを用いた白内障手術を受けた60代の女性の患者さまがいらっしゃいます。裸眼視力1.2とずっと経過良好で過ごしていたのですが、今年の夏に両眼とも見えにくくなったと8月に来院されました。
前房の炎症と網膜の中心部の黄斑に浮腫み(黄斑浮腫)があり、そのせいで視力が下がっていると思われました。
白内障術後の黄斑浮腫はごくたまにありますが、あるとすれば術後数ヶ月以内に起こることがほとんどで、今回のように術後1年以上経ってから出るケースはすごく稀でおかしいと思っていました。元々、IgG関連疾患のご病気をお持ちで炎症の素因があり、ステロイドの内服もされていたのですが、何らかの炎症が原因と思われたので、ステロイド薬の注射(テノン嚢下注射)を行いました。(黄斑浮腫は少しずつ改善傾向です)
ある日、その患者さまから『コロナのワクチンは関係あるかしら?』と言われ、よくよく話を聞くと、7月にコロナワクチンを接種し、それから見え方が悪くなってきたということでした。
ワクチンの影響(副作用)はその因果関係を証明することは難しいですが、炎症を起こす原因を調べる採血でははっきりとした異常はみられず、本当に単に個人の見解ですが、経過からするとワクチンの影響は十分考えられるのではと思っています。
それで、眼の内部の炎症の病気(ぶどう膜炎)に詳しい僕の学生時代の同級生に相談したところ、『まだはっきりとしたことは言えないが、コロナワクチンによると思われる眼への影響が報告されている』そうです。
コロナワクチン接種後に原田病というぶどう膜炎のタイプに似た炎症を起こすケースがあるようで、今、学会のワーキンググループレベルで調査中ということでした。
僕の患者さまも、IgG関連疾患という免疫系の病気をお持ちで、より炎症が起こりやすい条件があったのかもしれませんが、ぶどう膜炎の既往や膠原病などをお持ちの方はコロナワクチン接種後はちょっと注意が必要なのかもしれません。
おそらく、ほとんどの方はコロナワクチンを接種しても眼への影響はなく必要以上に心配しなくてよいのではと思っています。僕の患者さまのケースが本当にコロナワクチンの影響かどうかも本当のところは分かりません。
不安を煽るつもりも全くないですし、余計な心配をかけてしまったら申し訳ないですが、『今まで一度も明らかな眼の炎症が起こったことの無い方でコロナワクチンを接種後1ヶ月ほどで黄斑浮腫により視力が低下した』という事実は確かなことで、もしかすると、同じようなケースの方も世の中にはいらっしゃり、この情報が少しでも役に立てばとブログに書かせていただきました。
眼科学会等からコロナ関連の情報があれば発信していきたいと思いますが、コロナワクチン接種後に見え方の異常(かすむような見えにくさなど)がある時は、念のため、眼科受診をする方がよいかと思います。
↑この患者さまの黄斑浮腫(OCT画像)