今日の手術は白内障8件、黄斑上膜の硝子体手術1件、眼瞼下垂1人(両眼)と先月、入れたExtrafocusという人工虹彩型のアドンレンズの摘出がありました。
この患者さまは多焦点レンズの白内障手術後、近方の見え方が不良で違ったタイプの多焦点レンズに入れ換えをしたのですが、瞳孔が大きく、焦点深度がうまく出ずにやはり見えにくさがあり、ピンホール効果を期待して人工虹彩(瞳孔)型のレンズを入れました。視力は裸眼で遠方近方ともに0.8で数字上はそれほど悪くないようにも思えますが、昼間はそれなりに見えるものの、なんとな暗く感じ、夜になるとかなり見え方が悪く、ずっとサングラスをして見ているような見え方になってしまうそうで、おそらく、視力検査の結果以上に見えにくさがり、時間が経って改善するとも思えなく、ご本人の希望もあり、今日、取り出すことにしました。
瞳孔は眼の中に入る光の量を調整する役目(カメラでいうとしぼりのような役目)があり、暗いところでは広がり、明るいところでは小さくなります。多焦点レンズは光を遠方と近方と分けるで、それぞれの位置で少ない量の光を使って見るようになります。また、その光を分ける構造自体で数%の光がロスされるとされています。Extrafocusは虹彩に模した色のついた部分も必要な光は通す構造とされていますが、それでも多焦点レンズの入った眼には瞳孔径が小さいままでは、眼に入る光量が減るというマイナス面が前面に出てしまったのかと思います。おそらく、瞳孔の状態(大きさや働き)は単焦点レンズより多焦点レンズではずっと大きな影響があるのだと思います。
やってみないと分からない治療に対し、『よくならないかもしれないならやらない』という考え方もあると思いますし、『よくなる可能性があるならやってみたい』という考えもあると思います。今回、『やらない』方が結果的には正解だったかもしれませんが、やらずに『やったらもしかしたらよくなったのかな』と思いながら過ごすよりは、『やるだけやった』と思えた方がよいかなと個人的には思います。今回、Extrafocusを入れた治療の結果は残念でしたが、Extrafocusではよくならないということが分かったことは前進だと思いますし、決して、この治療をしたこと自体は間違いではなかったと思っています。もちろん、患者さまの感じ方が大事ですが、しなければよかったと思わないためにも、うまくレンズを取り出せればと思いましたが、負担なくレンズが取り出せたと思うので、少なくともまた最初の状態に戻ってくれればと思います。
この患者さまは今回のExrafocusの取り出しで7回目の手術(他院で3回、当院で4回)になりましたが、すごくよく勉強して、考えて、ご自分の意見をお持ちで、なかなかそこまでできる人は少ないですが、それはとても大切なことだと思います。また今後、何かの治療が必要になるか、しなければならないかはまだ分かりませんが、一生懸命頑張る患者さまには僕もできる限りのサポートはしていきたいと思います。
↑Extrafocusの入っている状態
↑Extrafocusを取り出すところ
↑Extrafocusを取り出して手術を終えるところ