今日は1日外来の後、4歳の女の子の霰粒腫の切開が1件でした。
手術の申し込みは白内障が2人と霰粒腫が1人(5歳女の子)でした。白内障の一人は40代の女性で急性緑内障発作の予防のために白内障手術をすることにさせていただきました。
急性緑内障発作というのは眼圧が急激に高度に上昇するとこで起こる状態ですが、この急性緑内障発作は誰にでも起こる訳ではなく、起こりやすい眼をした方がいます。
どういう人に急性緑内障発作が起こりやすいかというと、目が小さい人です。
目が小さいといっても見た目の目の大きさ=まぶたの開き具合ではなく、眼球の直径が短い人のことですが、眼球の直径が短いと眼の中の『前房』という水が溜まるスペースが狭く、前房の端にあり角膜と虹彩から作られる『隅角』という水が目の外に流れ出る部分も狭くなっているため、ちょっとした拍子に虹彩で隅角が閉じて水が流れ出るところがなくなってしまうと、前房にどんどん水が溜まって眼圧が急上昇してしまいます。
そこで、この緑内障発作が起こってしまった場合や未然に予防するためには治療方法が2つあります。一つはレーザーで虹彩に穴をあけて前房と後のスペースとの交通を作るレーザー虹彩切開術(LI)です。
もう一つは白内障手術です。『緑内障なのに白内障手術??』と疑問を感じる方も結構いらっしゃるのではと思いますが、虹彩の後ろ側に水晶体があり、この水晶体が濁る状態が白内障ですが、白内障になると濁りが出るだけでなく、ボリュームも増えます。そうすると、大きくなった水晶体で虹彩が押され隅角が狭くなって緑内障発作のを起こしてしまいます。そのため、白内障手術で水晶体を取り出し薄い眼内レンズに交換すると、虹彩が押されることがなくなり、緑内障発作を防ぐことができるという訳です。
LIは外来で数分の手軽な治療ではありますが、角膜の細胞(内皮細胞)を傷めてしまう水疱性角膜症を起こすこと、水晶体の支え(チン小帯)にダメージを与え、その後の白内障手術の難易度を上げてしまう恐れ、また、このLIで緑内障発作を完全に防げないこともあり、基本的には白内障手術の方が確実ですし、そもそもいずれほとんどの人に必要になる手術なので、よい治療かと思っています。ただ、白内障手術をすると自分の『調節力』は消失しますので若い方で単焦点レンズを使って白内障手術をすると、急に老眼が進んだような不自由さを感じてしまいますが、今は単焦点レンズでもアイハンスやレンティスといった焦点の幅がやや広い単焦点レンズもあり、50代以降の人であれば、それほど不自由を感じないのではと思います。
緑内障発作についてはちょっと分かりにくい話で説明もしにくいのですが、なるべく伝わるように説明したいと思いますので、もし、どちらかで言われてご心配な方はご相談ください。
あと、外来では先週、長野から来て霰粒腫の切開(右上下、左上の3ヶ所)をした2歳の男の子が経過を見せに来てくれましたが、キズはまだあるものの霰粒腫のしこりはしっかり取れていて経過はよさそうでよかったです。遠くからありがとうございました。
↑正常眼と狭隅角眼の前眼部OCT像(眼球の前の方の断面をみる検査)