今日は1日外来の後、霰粒腫の切開が3件(2歳女の子、3歳女の子、24歳女性)と最後に急遽、眼内炎の手術を行いました。
眼内炎というのは手術の後に眼の中に炎症が強く出る状態で、細菌が原因だったり、白内障手術の眼内レンズに免疫反応(無菌性眼内炎)が原因のこともありますが、今回は手術所見から細菌性眼内炎と思われました。
先週の金曜日に黄斑上膜で硝子体手術を行い、翌日の経過は良好でしたが、3日目の今日から『急に見え方が悪くなってきた』と予約外で夕方いらっしゃいました。術後の硝子体出血かな?と思いながら眼を診ると、前房という眼の前の方のスペースに炎症所見であるフィブリンとその析出である『前房蓄膿』があり、眼底はよく見えず、『眼内炎』と考えられたため、急遽、眼の中を洗う処置を行いました。前房をよく洗い、その後、硝子体まで入り、残った硝子体と硝子体中の混濁を可及的に切除、洗浄し、抗菌薬の眼内注射をして終えました。眼底は網膜出血があり、細菌性の眼内炎で間違いないと思いました。
眼内炎は白内障手術や硝子体手術2,000件に1件程度起こるとされていて、僕自身、自分の手術で起こったのは初めてでした。もちろん、起こさないように対策は行って手術はしていましたが、今回の患者さまでは眼内炎を起こしてしまい、申し訳ない限りです。『起こさない』という気持ちが『起こらない』に変わっていたのかもしれません。滅多に起こることではないのですが、決してゼロではないということを再認識させられました。
眼内炎を起こしてしまったということはよくないことなのですが、ブログに書こうと思ったのは、やっぱり眼内炎は起こる可能性があるということと、一番、大切なのは『術後におかしいと思ったら早めに受診すること』ということを手術を受ける患者さまに伝えたいと思ったからです。もちろん、僕たち医療者側も眼内炎を起こさないための対策、努力をする義務があり、できる限りのことはしているつもりです。ただ、残念ながら、それでも絶対起こらないとはいえません。眼内炎が起きてしまった場合、時間との勝負になります。抗菌薬の点眼、点滴、眼への注射なども行いますが、一度、眼の中に入ってどんどん増殖する細菌を減らす一番の方法は細菌を洗い流すことです。細菌は指数関数的に増え続けるので、なるべく早い段階、細菌が少ない時点で洗い流すことが効果的です。眼内炎の症状は視力低下に加え、眼脂、充血、眼痛などがあり、術後にこのような症状が急に現れたら次回の診察予定を待たずに早めに受診ください。結果的になんともないこともありますが、大丈夫と思って実はよくないことが起こってしまうより、心配して受診して、結局、大丈夫な方がずっといいと思います。
眼内炎を起こすと、細菌の毒素で網膜が炎症を起こしぼろぼろになってしまい、強い視力障害、最悪の場合、失明に至ることもあります。今回の患者さまの場合、比較的、早い段階で眼内洗浄の処置ができ、網膜の状態もそれほど悪くなかったので、なんとか視力障害を残さずに回復が期待できるのではと思っています。もちろん、楽観はできませんが、なんとか視力を維持できるよう引き続き、できる限りの対応をしいきたいと思います。患者さまも毎日の通院になり、大変で申し訳ないですが、『私も頑張らなきゃ』と言ってくださり、僕ももっと頑張らねばと思いました。なんとか改善できるよう頑張ります。
↑眼内炎の前眼部写真