今日は午前だけの外来で落ち着いていました。
すこし時間があったので、診療終了後に今週の水曜日に来た患者さまに採血データを送る準備をしつつ、ちょっと手紙を書きました。
『5年前から左のまぶたが腫れ、近くの眼科でものもらいと言われ、3年間、色んな目薬を使ったけど、よくならないので必要があれば手術して欲しい』と40代前半の女性が来て下さったのですが、何年間も続くものもらい(麦粒腫)なんて存在しないですし、霰粒腫のようなしこりがまぶたにできている訳でもなく、ある所見は眼球が若干飛び出ている感じ(眼球突出)で、若い女性だったので甲状腺の病気(バセドウ病)からの眼の異常(甲状腺眼症)か他の眼窩内病変(眼の奥の腫瘍など)を疑って、その日のうちに近くの脳外科の先生(横浜いとうクリニック)に画像検査目的で紹介しました。次の日に、早速、伊藤先生からのお返事があり、画像診断の結果は脳腫瘍が眼の周りや副鼻腔(眼の周りや鼻の奥のスペース)に拡がっていて早めの治療が必要で大学病院の脳外科に紹介したということでした(伊藤先生は画像を撮ってくださるだけでなく、素早く診断し、脳に病気があれば適切な施設にそのまま紹介してくださり、とてもありがたいです)。
僕も脳腫瘍が眼の周りに拡がっているとは予想していませんでしたが、もしかすると、前医で治療していた何年も前から腫瘍が存在していたのかもしれません。そうなると、誤診ということになりますが、正直、診断というのは難しくて、何か検査をすれば、すぐこの病気と分かるものは少なく、色々な症状や所見、経過から、この病気が一番疑われると考えて治療を行います。つまり、確定診断がつかないで疑いで治療することも多いということです。もちろん、他の病気の可能性も視野に経過を見ますが、思ったような経過でなければ、他の病気の可能性をより強く考え、追加の検査や治療を行なっていくのが、現実的な医療かと考えています。医者は病気のことを全て分かっているとか、何でも知っているとか、間違いが全くないということは決してないと僕は思っています。少なくとも自分はそうです。そう思いながら診療を行なっています。こんなことを言うと、『この医者、大丈夫?』なんて思われてしまうかもしれませんが、それでも僕自身はそう思って診療をしていることは伝えたいと思います。もちろん、色々なことを考えて一番正しいと思った診断、治療を行いますが、それが、正しいかどうか検証しつつ、もし、違うかも?と思ったら、考えを修正し、患者さまに悪い影響がなるべく出ないように、仮に出るとしても、最小限で済み、よい方向に向かえるような診療を行うことが大切だと思っています。
なぜ、こんなことをブログに書くかというと、患者さま自身にも自分の身を守るためというか、症状がよくならなくて『大丈夫かな?』『おかしい』と感じた場合は、担当の先生とよく相談し、他の検査や治療を考えたり、その先生に限界があれば、ほかの医療機関でセカンドオピニオンを求めることもとても大切だと思うからです。今回の患者さまはおそらく前の先生をとても信頼し、ずっと通院していたのだと思います。もちろん、医師と患者の信頼関係は医療を行う上でとても大切で、信頼があった方が治療がうまくいくケースが多いですが、信頼しているからこそ、よく会話をし、自分の状態、状況を教えてもらい、ご自分でも自分の病気のことを理解して納得できる治療を選択し、『あの時、こうしておけばよかった』(逆に『こうしなければよかった』)という後悔のない経過を辿って欲しいなと思います。
脳腫瘍の治療はおそらく手術になり大変だと思いますが、脳外科の治療もとても進歩している分野だと思います。今回、病気をみつけることができたと前向きに捉えて治療を頑張っていただきたいと思います。頑張ってください。
↑左眼が少し出ているために二重が幅広く白目が多いように見えます。
↑赤で囲んだ部分が腫瘍だと思います。