土曜日は学校が休みのため、お子さんのご来院が多い曜日です。霰粒腫の術後や近視治療のオルソケラトロジーやマイオピン点眼のお子さんが主ですが、初診でいらした4歳の男の子は『弱視』の疑いでした。
視力は産まれた直後からよい訳ではなく、成長とともに発達していきます。その視力の発達に大切なのが、『適切な視覚刺激』です。つまり、何かを見ることで視力が成長していく訳です。しかし、この『適切な視覚刺激』が受けられない場合、うまく視力が発達しません。これが『弱視』の状態です。
この弱視の原因として多いのが『強度の遠視』です(遠視性弱視)。誤解されやすいのですが、遠視は『遠くがよく見える眼』ではなく、網膜より奥(遠く)にピントができてしまう状態のことです。遠視というと『遠くが見えているのでは?』と思うかもしれませんが、確かに軽い遠視であれば遠く(も近く)も見ることは可能です。それは、軽い遠視であれば、調節力を使うことで、ピントを合わせることができるからです(加齢で調節力が落ちてくると見えにくくなり、これが老眼です)。でも、調節力を使ってもピントを合わせられないくらい強い遠視だと、像がぼやけて適切な視覚刺激が得られないため、視力がうまく発達できなくなってしまう訳です。そこまで遠視が強くなくとも、片眼だけ遠視があると、その遠視の眼だけ弱視になってしまう場合もあります。
視力の発達は7〜8歳までといわれており、それ以上になってしまうと、いくら治療をしても改善が得られないので、それまでになるべく早く弱視の状態を見つけ出し、適切な治療を始めることがとても重要です。調節力が働くと、見かけの遠視の値が小さく出ることもあるため、調節力を弱くする点眼(アトロピン)を使い、遠視の度数を見る検査を行います(調節麻痺下屈折検査)。それで、遠視性の弱視がはっきりすれば、治療は通常、眼鏡を使い、遠視を矯正し、しっかり物を見させることです。片眼性の場合は、単に眼鏡をするだけでなく、弱視でない見えている眼をパッチで隠し、弱視の眼をしっかり使うアイパッチの治療が必要になることもあります。近視の場合は、必ずしも眼鏡をつけずに生活しても構いませんが、弱視治療の場合は程度や時期にもよりますが、眼鏡で見ることが治療なので、なるべくしっかり眼鏡をすることが治療として必要になります。
小さいお子さんは訴えが少なく、そもそも、元から見えないと、見えないという自覚はないため、ご家族が『あれ?見え方がおかしい?』という注意をしながら見ることも大切かと思います。眼の性質は遺伝しやすいため、ご両親やお兄ちゃんお姉ちゃんが遠視の場合は、尚更、そういう目で見守ることも必要かと思います。
ちなみに、遠視は成長とともに減ることもあるため、大きくなると、眼鏡が要らなくなる場合もあります。あと、近視が強い子も『弱視ですか?』とお父さんお母さんからきかれることもありますが、近視の場合は遠くは見えなくとも、近くは必ずピントがある距離があり、適切な視覚刺激が得られるため、通常は弱視になることはないので、あまり心配しなくてよいかと思います(ただ、すごく強い近視や乱視があると、弱視になる場合もあります)。あと、生まれつきの眼瞼下垂(先天眼瞼下垂)も弱視の原因になることがあるので注意が必要です。
今週も一週間、どうもありがとうございました。お疲れ様でしたm(_ _)m
↑遠視は眼の奥に結像してしまう(焦点ができてしまう)状態です。