今日の手術は白内障が11件に眼瞼下垂と硝子体出血の硝子体手術が1人ずつでした。
『今日の手術も無事、終えました!』と言いたいところですが、白内障手術では久しぶりに『後嚢破損(PCR)』という合併症を起こしてしましました、、、
白内障は水晶体が濁った状態ですが、周りの水晶体嚢という透明な薄い膜の前の部分を丸く切り抜いて、中の濁りを取り出して、その残った水晶体嚢の中にレンズを入れる手術をしますが、水晶体嚢の後面にキズをつけてしまうのが後嚢破損です。後嚢破損を起こして何が悪いかというと、レンズを水晶体嚢の中に固定して入れる方法ができなくなってしまうことがあるのと、水晶体の奥にある硝子体が前の方に出てきてしまうことが問題になります。
今回は水晶体の硬い濁り(核)を取る最中に後嚢破損を起こしてしまいましたが、核はそのまま超音波できれいに取れたので、先にレンズを入れ、レンズを安定させてから、柔らかい水晶体の濁り(皮質)前の方にを出てくる硝子体と一緒に硝子体カッターという器械を使って取り除きました。後嚢破損を起こすと、水晶体の濁りが眼の奥の方に多少、落ちるので、それが飛蚊症としてしばらく感じてしまうことと、手術時間も通常より10〜15分くらい延びてしまうので、患者さまには申し訳ありませんでしたが、予定通りのレンズの入れ方で終えることができたことはよかったです。(あと、後嚢破損を起こすと、術後に網膜剥離が起こることもあるので、経過観察も注意したいと思います)
後嚢破損は白内障手術100件に1回くらい起こるとされていて、僕自身はここ1年くらいはなかったので、おそらく700件程度に1回くらいの頻度なので、滅多に起こることではないのですが、起こさないように気をつけていてもちょっとしたことで起こるので、ゼロにはならないと思います。後嚢破損を起こさないことも大事ですが、起こした後、どれだけ適切に処置ができるかがもっと大事だと思っています。そうすることができれば、後嚢破損を起こした影響を限りなくゼロに近づけることもできるからです。トラブルが起こらない手術をしたいと心掛けていますが、もし何か起こった時でも冷静に適切に対応できる手術をしたいと思っています。
このような合併症のことはあまりブログやHPには出したくないところかもしれませんが、どうしても起こりうることなので、手術を受ける患者さまには知識として(必要以上に心配することではありませんが)知っておいて欲しいなと思い書いています。
眼瞼下垂や硝子体手術は少し時間がかかるので、点滴と笑気麻酔で鎮静して、ぼーっとした状態で手術をするようにしています。時々、『全然、眠くなかったよ』と言われてしまうこともあるのですが、眼瞼下垂では途中で眼を開けていただき、まぶたの上がり具合を確認するのと、硝子体手術では完全に寝てしまうと急に顔を動かしてしまう方もいるので、全く意識が無い状態ではなく、ウトウトしながらなんとなく手術 しているんだと分かるくらいの鎮静状態を目指しています。
眼瞼下垂の患者さまは80代の女性でしたが、手術の終わり頃、患者さまのお孫さんの話になって、お孫さんが大学生で陸上選手で1500mの学生チャンピオンなんて話を聞かせてくださいました。僕は中学時代は陸上部で今でも陸上の話は好きなので、もし、手術の時に寝ていなくて余裕があったら、もっと話を聞かせていただきたかったなと思ってしまいました。
硝子体出血というのは何らかの原因で、硝子体(眼の中の方)に出血を起こした状態です。ある程度、軽度であれば、自然に出血が吸収され、症状の改善が期待できますが、量が多いと、なかなか自然には出血が引かないので手術で取り除いた方がよい場合や原因がはっきりしないで眼の中が出血だらけで見えないと、悪い原因で出血している場合、あまり時間が経ってから手術すると、眼の中が大変なことになっていたなんてこともなくはないので、原因がはっきりしない硝子体出血は特に手術のタイミングが大切というか、早めに手術で出血を取ることも考えなければなりません。ちなみに、悪い原因というのは、網膜裂孔による網膜剥離です。網膜に穴が開く時に、血管が切れての硝子体出血を起こすことがあり、放置するとどんどん網膜が剥がれてしまうので気をつけねばなりません。
ちなみに、今回の患者さまは、あまり注意は必要のない加齢黄斑変性からの硝子体出血で、元々、視力はよくはなかったのですが、硝子体出血で更に見えにくくなってしまい、少しでも視力を改善する希望で手術となりました。極端な改善は難しいと思われますが、それなりに出血はあったので、少しでも見えるようになってくれるといいなと思います。
今日の手術は後嚢破損の合併症はあり、無事とは言えないかもしれませんが、レンズはうまく入れることができ、予定通りに終えることができてよかったです。皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m
↑PCRのイメージ図。これはいかにも失敗な感じですが、、、