今日は一日外来でした。手術の申し込みは白内障4人、眼瞼下垂1人、霰粒腫3人(10歳女の子、36歳女性、50歳女性)でした。
白内障の手術を受ける(希望する)患者さまからよく聞かれることで、『乱視があるんだけれど、それも治るのかな?』という質問があります。
乱視に関しては白内障の手術である程度の改善が望めます。基本的には裸眼視力に影響がないように乱視をコントロールしようと思って白内障の手術を行なっています。
ただ、『ある程度、治る』とか『乱視をコントロールしようと思って』とちょっと曖昧な表現になってしまうのは、白内障手術時の乱視矯正は、どうしても不確定な要素があるためです。
一つ目は、乱視の正確な測定が難しいことで、角膜の前面と後面で乱視の程度が違うこともあり、過小評価されてしまうことがあることです。また、手術の時に角膜に切開創を作りますが、この切開などにより乱視が増えることもあり(惹起乱視)、乱視の不測の変化をもたらすことがあります。
二つ目は、トーリックレンズには軸があり、この軸を眼(角膜)の乱視の軸(強主経線)に合わせて固定する必要があるのですが、この軸が1°ズレると約3%の乱視矯正効果が30°ズレるとほぼ乱視矯正効果がなくなるとされています。
三つ目は、トーリックレンズの円柱度数(乱視矯正度数)は0.75D刻みで、国内で使えるトーリックレンズの最小度数は1.25Dとなっています。軽い乱視は必ずしも矯正は必要ではありませんが、微妙に使った方がよさそうな乱視に使える弱めのトーリックが無いことと、0.75D刻みなので、必ずピッタリ、ゼロになる度数がある訳でもありません。
というような要素から、なかなか白内障手術で乱視を全くなくすことは難しい面もあります。
ですので、『乱視は眼鏡で矯正すればいい』という先生もいらっしゃいますが、あまり強い乱視が残るのは、見え方の質を低下させる原因になりますので、ある程度の乱視が残ると予想される眼では、せっかくトーリックレンズがありますから、このトーリックレンズを使って、できる限りの対応はすべきだと思っています。
↑トーリックレンズ 軸を表す点々がついています。