今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術の申し込みは黄斑上膜の硝子体手術1人、霰粒腫が2人(1歳9ヵ月男の子、4歳女の子)でした。
今日の手術は、白内障11件と眼瞼下垂が3人でした。
白内障の手術では75歳の女性で、水晶体の支えであるチン小帯が弱く、超音波で水晶体を破砕吸引する際に、Zinn(チン)小帯が一部、眼の壁から外れる『チン小帯断裂』という状態になってしまいました。そうなると、水晶体の袋(水晶体嚢)が不安定になり、超音波のチップで水晶体嚢にキズがついてしまう『後嚢破損』という状態も起こってしまいました。なんとか、水晶体の硬い部分(核)は超音波で処理できましたが、水晶体の奥にある、硝子体が眼の前の方のスペース(前房)に出てきてしまう『硝子体脱出』という状態も出てきてしまい、硝子体はカッターという器械で切除吸引し、残った水晶体の濁りもカッターの吸引で取り除き、水晶体嚢の一部分に損傷があるので、推奨はされていないのですが、CTRというチン小帯を支えるリングを水晶体嚢の中に入れ、レンズも予定通りのものを水晶体嚢の中に収めて(嚢内固定で)終えることができました。今回はうまく嚢内固定ができたのでよかったですが、後嚢破損が起こった場合、レンズは水晶嚢の上に入れる嚢外固定という方法が一般的です。ただ、今回はチン小帯が一部、外れていましたが、CTRをうまく使って嚢内固定できれば、その方がレンズが安定して入れられるという判断をしました。
チン小帯の強さ(弱さ)は事前に分かることもあれば、手術して初めて分かる場合もあり、いつも通りの手術にはならず、状態に応じて、その場その場の決断に迫られる状況でいかに適切な術中判断が下せるかがとても大切だと思います。
時間も全部で20分くらいかかってしまいましたので、ちょっと眼には負担となり、視力の改善は少し時間がかかるかと思います。あと、どうしても水晶体の濁りが硝子体の方に回るので、術後は飛蚊症が強く現れると予想されます。この飛蚊症は少しずつ改善することが多いですが、あまり残ってしまうなら、硝子体手術で余計な濁りを取り除く処置も検討したいと思います。チン小帯断裂や後嚢破損は避けられるに越したことはなく、このような状況になってしまい、申し訳ありませんでしたが、ひとまず必要な対応はできたかと思いますので、視力の改善し症状が落ち着くのをお待ちいただければと思います。