今日は一日外来で夕方に霰粒腫の切開が3件(5歳男の子、16歳女の子、50歳女性)ありました。
手術の申し込みは白内障4人、眼瞼下垂2人、霰粒腫3人(21歳女性、37歳男性、59歳女性)でした。
今日は来週、手術予定の眼内レンズ交換の患者さまの術前説明がありました。
この患者さまは都内の病院で単焦点レンズで遠方にピントを合わせる予定で白内障手術を受けたのですが、結果的に-1.5Dの近視になってしまってレンズを交換することになりました。
前の先生からの『適切な検査をして、データの入力間違いなくレンズの計算をしたけれど、個体差によってレンズの度数がズレてしまった』という説明の用紙を患者さまがみせてくださいました。要はやるべき事はやったけれど仕方がないということだと思います。確かにレンズ計算はあくまで計算ですので、予測とズレることもあります。僕も前の先生からはデータをいただいていて、遠方に合う度数は確かに選ばれていました。だったら、やっぱり、仕方ないと思います、、、とはならないのです。
確かにその先生の“計算”では適切なレンズが選ばれていました。しかし、その計算の“式”がまずかったのだと思います。眼内レンズの度数を計算する計算式はいくつか存在し、以前はSRK/T式という計算式が一般的でした。しかし、この式は標準的な作りの眼では精度が高いのですが、角膜のカーブが異常だったり、眼の長さが極端に短かったり、長かったりというプロポーションのよくない眼には不向きとされ、それを補うために色々な計算式が考え出されてきました。
この患者さまの角膜は標準的な眼に比べると、急なカーブをしているので、僕のところで眼内レンズ計算をするならば、バレットユニバーサルⅡという計算式を使います。そうすると、SRK/Tではぴったり遠くに合う度数だったレンズが、バレットユニバーサルⅡでは-1Dになるという計算になりました。まだ0.5Dの誤差はありますが、この患者さまは白内障の手術の後に眼瞼下垂が見えにくさの原因では?と言われ、眼瞼下垂の手術をしています。まぶたの挙がり方が変わると、また角膜のカーブが変化することもあり、おそらく、眼瞼下垂の手術の影響がその0.5Dの原因ではと思っています。
話がちょっとややこしくなってしまいましたが、『きちんと検査をして、間違いないデータで計算をして適切と思われるレンズを選びました』と言われても、その前提となる“計算式”が適切に選択されていないとこのような結果を招いてしまという典型的なパターンと思われました。ですので、患者さまの眼が“特別な眼”だったと済ますのではなく、何がその誤差の原因になってしまったのかは検証すべきですし、結果として度数ズレが生じていまったのなら、“仕方ない”で済ますのではなく、レンズは入れ換えるべきだと思いますし、もしご自分でできないのであれば、何らかの手立てを提案するのが本来の手術医の責任であると僕は思います。
手術の結果というのは、必ずしもうまくいくものではないと思っていますが、その時に何かできることがないか考えること、もしあるならばできる限りのことをすることが、当たり前かもしれませんが、大切だと思っています。
↑このようなレンズ計算のデータからレンズ度数を選択します。