今日は午前のみの外来でした。
硝子体混濁で一昨年4月、昨年6月に硝子体手術をさせていただいた40代後半の男性の患者さまがいるのですが、硝子体の濁りを念のため、病理検査に出したところ、クラスⅢで悪性リンパ腫の可能性が否定できないという結果のため、近くの大学病院(内科)に紹介しましたが、そこでも診断がつかず、癌研を経て、都内の大学病院で検査、治療をしながら、僕の方でも3ヶ月に一度、経過観察させていただいておりました。硝子体の炎症や濁りが再び出ることはなく、落ち着いた経過でしたが、今日、再診でいらした時に『白内障の手術をしました』とのことだったので、アレ?っと思いました。話を聞くと、悪性リンパ腫の治療で眼に薬を注射する治療を数回行う必要があり、その時に、水晶体をキズつけてしまい、急速に白内障が進行し、手術せざるを得なくなってしまったそうです。注射の針で水晶体をキズつけたということは、水晶体の袋(水晶体嚢)に裂け目ができ、そこから白内障の濁りが目の奥(硝子体腔)に落ち(水晶体落下)硝子体手術で水晶体の濁りを取り除き、レンズは水晶体嚢の中に入れる『嚢内固定』ができずに、残念ながら希望のレンズ(レンティスコンフォート)は使えず、単純な単焦点レンズを水晶体嚢の前面に乗せる『嚢外固定』で手術を終えたそうです。結構、大変な手術になってしまったのではないかと思います。お疲れ様でしたm(_ _)m
ちなみに、僕も少し前に硝子体注射後の白内障の患者さまで後嚢破損を生じたケースを経験しましたし、最近、僕が所属する白内障のコミュニティでもそういう話が出たので、やっぱりある一定数、硝子体注射で水晶体が損傷されることによる白内障進行があるのだと思います。多くはないとは思うので、あまり必要以上に心配することはないと思いますが、加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症などで硝子体注射を繰り返し受けている方は、こういうこともあるかもしれないとあたまの片隅に置いておいてもよいかのかなと思いますし、こういうことが『心配だから硝子体注射はしない』とまでは思わなくてよいかと思います。
それから、昨日の白内障の手術の方から『先生は栃木の生まれなのですか?』と聞かれましたが、その患者さまは宇都宮のご出身(県内一の進学校、宇都宮高校を出られたそうです)で僕と同郷とのことでした。更に、甥っ子の方がまた僕と同じ山形大学を卒業されて医師をされているそうでした。それから、お母さまも女子医大を出た医師だそうで、僕が医師になって働き始めた大学病院ということで、またまた縁のあるお話を聞かせていただきました。こういう縁って不思議でおもしろいなと思います。これからも人との出会いを大切に診療していきたいなと改めて思いました。
今週はマンパワーの問題で予約外の対応がなかなかできずにご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。体制が整い次第、通常の診療に戻したいと思いますので、もう少々お待ちください。限られたメンバーでできる限り頑張ります。
今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m
↑硝子体注射のイメージ図。針の刺し方で水晶体を傷つけてしまう恐れが、、、