今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術は白内障13件、黄斑上膜の硝子体手術1件、眼瞼下垂1人でした。
白内障の手術のお一人は強度近視の40代半ばの男性で先月、左眼の手術をし、軽い近視を狙ったのですが、思ったより遠方に合ってしまい、見え方の変化を見るために右眼の手術は少し先延ばしに、今日、行いました。結局、左眼は遠めに合った状態で安定し、近方が見えにくく不自由があったため、右眼は近方を確保することを目標に度数を選択しました。
レンズの度数計算に関わる因子は、角膜屈折力(角膜のカーブの度合い)、眼軸長(眼の長さ)、前房深度(レンズの収まる位置)が重要です。角膜のカーブが特殊だったり、眼軸が極端に長かったり短いと計算通りにいかない場合もありますが、角膜や眼軸の測定自体はかなり正確にできるようになってきています。また現在、いくつかの眼内レンズ計算の計算式が存在しその眼にあった計算式を選択し、その眼により合った式を使うことでより精度を高めることができるようになってきています。ただ、結構、不確定な要素となってしまうのがレンズの収まる位置で変わってくる前房深度かと感じています。レンズの位置は前よりになると、眼の屈折は、近視側に、後ろ寄りになると、遠視側に度数のズレを生じさせます。水晶体嚢の支えの強さや元々の白内障(水晶体)の厚さなどからレンズの収まる位置は個人差が出ると思うので、これが度数ズレの大きな要因の一つではないかと、個人的には考えています。今回の患者さまも前回の手術の時に、前房の深さの変化が強く、おそらく、レンズの固定の位置が予測よりも硝子体側になり、計算よりも遠視気味になったのかなと考えています。
結果的には、術後に屈折の変化はあまりありませんでしたが、術直後に計算とのズレがあっても、時間の経過でズレが少なくなってくることもあるので、すぐに判断するのではなく、ある程度、待って判断する必要があると思っています。
この患者さまも近視が強く、片眼が終わって左右差が強い状態で、早めにもう片眼の手術を受けたい気持ちはあったと思いますが、どうすることがよりよい結果につながるかをご理解いただき、我慢して待っていただいて、本日の手術になりました。正直、結果がどうなるかは分からない部分もありますが、僕自身もベストな選択をしたと思っていますし、患者さまも十分考えての選択ですので、結果がどうあれ、納得して前に進むことができるのではと思います。
白内障の手術は手術自体はとても安全性が高いですが、焦らずしっかり段階を踏んで治療を進めることが大切かなと思っています。