院長ブログ

糖尿病網膜症を放置すると

今日は午前が外来で午後は手術でした。今日の手術は、白内障11件、眼瞼下垂1人、下眼瞼腫瘍(脂肪腫)切除1人、糖尿病網膜症の硝子体手術1件でした。

糖尿病は血糖が高くなり、血管が障害され様々な問題を起こしてくる病気ですが、眼にも病気を引き起こします。網膜の血管が悪くなると、網膜の表面に出血(眼底出血)や網膜の浮腫みを起こし、更に進行すると、血管が詰まって(閉塞して)網膜の血の巡りが悪化(虚血)すると、新たな血管(新生血管)を作ろうとする働きが起こるのですが、その新生血管は弱くて脆いため、容易に眼の中(硝子体中)に出血(硝子体出血)を起こしたり、新生血管と一緒にできる膜組織が網膜を引っ張ってしまい網膜剥離(牽引性網膜剥離)を起こすことや、新生血管が眼の中の水(房水)の出口の隅角にできてしまい、房水の流れが著しく滞り眼圧が上がってしまう血管新生緑内障を起こし、最終的に失明に至る可能性のある病態が糖尿病網膜症です。

今日の硝子体出血で硝子体手術を行なった84歳の男性は3年前に当院で左眼の白内障手術を行い、その時に糖尿病と網膜症がみつかり、検査をしてレーザー治療をしましょうという話をしていた後に通院が途絶えてしまい、いよいよ見えにくくなって最近、久しぶりに受診されました。白内障の手術の後は1.0まで視力が出ていましたが、今回の手術前は大量の硝子体出血があり、眼の前で手が動くのが分かるくらいの視力(手動弁)まで低下していました。

今日の手術では、硝子体と一緒に出血を切除、除去し、中心部を除いた網膜の広範囲にレーザー治療(汎網膜光凝固)を行い、網膜の中心部(黄斑)の上に異常な膜の増殖を認めたため、その膜を剥がす処置を行いました。しかし、糖尿病の影響が強い網膜は非常に弱いため、膜を剥がす際に網膜のキズ(裂孔)ができてしまったため、最後に眼の中を空気に換えて手術を終えました。

黄斑部にもよくないシミができており、網膜の細胞のダメージが予想され、極端な視力の改善は難しいかもしれませんが、硝子体中の出血はきれいに取ることができたので、少しでも見え方が改善してくれるといいなと思います。

糖尿病は眼に限らず、放っておくと、よくない方向に進み、重大かつ後戻りできない悪い影響を残してしまう可能性のある怖い病気ですので、内科的なコントロールをしながら、もし、眼の方にも影響が出ていれば、適切な時期に適切な方法で治療を行うことが非常に重要だと思います。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

↑3年前の眼底写真。十分、レーザー治療の適応です。

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