今日は午前のみの外来で、手術の申し込みは、霰粒腫1人(3歳男の子)でした。
霰粒腫や先日のデルモイドシストの患者さまで笑気麻酔での切開を希望されて当院へ来る方(ご両親)から、『なぜ笑気麻酔で切開してくれる病院は少ないのですか?』と聞かれることもよくある気がします。
その言葉の通りの質問であれば、『笑気麻酔は必ずしも必要なものではないから』というのが一番シンプルな答えかと思います。
僕は小児の処置で役に立てばということと、大人の手術でもあれば少しは楽に受けてもらうことができるかもという期待で導入しました。
でも、無ければ処置ができないというものでもないですし、子どもの処置はしないというのであれば、尚更不必要と感じられてしまうかもしれません。
麻酔の医療機器ですから、それなりに高価ですし、笑気ガスと酸素ガスも購入する必要があります。この麻酔を使えば収益が上がるというものでもありません。そうなると、経営面からは積極的に取り入れる施設はそう多くはないと考えられます。
また、病院勤務の先生からは、病院では全身麻酔で笑気を使うので、手術室で笑気を使うことは可能であっても、麻酔科管理になり、簡単に使うことが難しく、その全身麻酔の設備があるために処置用の笑気麻酔の器械を導入してもらえないという話を聞いたことがあります。
あと、笑気麻酔は正直、すごく効くという程ではないと個人的には感じています。笑気をかいでもらって手術しても『全然聞いた感じがしなかった』と言われることもあり、少なくともすごく強い麻酔というものではないと思います。しかし、それでも、緊張の強い方には何もしないよりはあった方がいくらかはプラスと感じることもあるので、僕は笑気麻酔を入れてよかったと思っています。
なので、『どうしてもないといけないこともなく、プラスαの設備になりますし、購入費用や維持費もかかりますが、それほど強い効果がある訳ではないので、要らないと思えば入れない施設も多いと思います』と答えています。
でも、こう答えても『そうなんですね!』とスッキリしたようなレスポンスが無いことも多く、もしかすると、その質問が『あまり使っているところがないけれど、本当に安全なの?』という意味なのかな?と思うこともあります。
もしこの意味だった場合の答えはより明確で『安全性は心配しなくて大丈夫です』ということになると思います。
笑気を使う時に問題になるのは、笑気ばかりが入ってしまって酸素が不足してしまう“低酸素”ですが、僕のクリニックで使っているような笑気麻酔の器械は安全装置がついていて、ある程度の酸素が入らないと、笑気が出ないような構造になっています。更に、笑気ガスはチューブで鼻から吸ってもらうのですが、その隙間や口から空気も吸いますので、酸素不足になることはまずありえませんし、笑気と一緒に入る酸素ガスのお陰で体の血中酸素濃度は上がるという報告もあります。
笑気を吸って完全に寝てくれれば楽ですが、そうなることはかなり少なく、よくも悪くも強くない麻酔で逆に考えると、危険ではないとなるのではと思います。
これはあくまで僕個人の使用感や経験からの考えですが、笑気麻酔は濃度や流量(ガスが出る量)の調整、ガスを吸わせ方(チューブの形状)などで効果は変わってくると思うので、もしかすると、もっとうまく使えると『笑気麻酔はすごく効くよ!』とおっしゃる先生もいるかもしれません。なので、参考程度にお考えいただければと思います。
今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m