今日は午前が外来で午後は手術で、白内障10件、眼瞼下垂3人、霰粒腫1人(10歳男の子)でした。
今日は今年最後の白内障の手術日でしたが、患者さまのお一人は強度近視の上に偽落屑症群(PE)という所見があり、案の定、チン小帯(水晶体の支え)が弱い難症例でした。CCCはなんとかできましたが、超音波での核処理は通常の方法では持ちこたえられなそうだったので、カプセルエキスパンダー(CE)という補助器具を使いました。このCEについては以前のブログでも触れたことがありますが、昭和大学藤が丘病院時代に眼科医としての指導をいただいた谷口重雄教授が開発した器具で、これを使うことでチン小帯が弱く、小切開の超音波手術が難しい白内障(チン小帯脆弱白内障)も、そのまま手術を行うことが十分に可能となるとても素晴らしいものです。チン小帯が弱い場合、状況に応じて傷口を大きくして核を取り出す方法や硝子体手術で対応しなければならないこともあり、これらの対応も決して悪い訳ではありませんが、傷口を大きくせず、硝子体に触れずに水晶体を取り出せることは、余計な乱視を作らず、硝子体手術の合併症の心配もなく、術後のよりよいQOV(見え方の質)にとって大きなアドバンテージがあると感じています。
今回の患者さまでは、水晶体の濁りを取り除いた後、水晶体嚢は残せなかったので、眼内レンズを挿れずに手術は終えました。元々、近視がとても強く、挿れる予定だったレンズの度数はほぼゼロだったので、レンズが無いことは大きな影響はなさそうですが、もし、レンズがあった方が見え方としてよければ、改めてレンズの挿入(強膜内固定)を予定したいと思います。
CEを使いこなすにはコツや技術も必要で、言うほど簡単ではないかもしれませんが、僕は藤が丘時代に谷口教授の難しい白内障の手術を助手として、間近でたくさん見させていただいたおかげで使い方のイメージを持つことができていると思っています(もちろん、まだまだ、谷口教授のようには使いこなせていませんが、、、)。谷口教授の手術を近くで見ていたこと、教えていただいたことは本当にありがたいことで幸せなことだと強く思いますし、今でもとても大切な財産になっています。今年最後の白内障の手術日にCEを使うことで、改めてそう思いました。少しでも谷口教授のような手術ができるように、来年も頑張ろうと思います。
↑カプセルエキスパンダーを使った白内障手術