今日は一日外来でした。手術の申し込みは、白内障3人、眼瞼下垂1人、眼内レンズ交換1人、アドオンレンズ1人、霰粒腫2人(8歳女の子、53歳女性)でした。
今日も白内障術後の相談の方が2名いらっしゃいました。
一人は50代後半の女性で昨年8月に左眼、10月に右眼の白内障手術を受け、『遠くにピントを合わせたかったが、左眼は中間、右眼は近くにピントが合うようになってしまった』そうで、『眼が痛くなってしまう。気持ちも悪い。』状態がつづいているそうです。
これは、どうも最初に行った左眼の手術で計算よりピントが近くになってしまい、何故か、右眼の手術ではさらに近くに合わせるような度数のレンズが選ばれていました。最初の眼の手術で予想よりピントが近くなってしまったのなら、次の眼の手術の時にそれを考慮して、遠方めに合わせてあげたら、それで済んでしまったような気もしますが、そこは術者の意見を聞いてみないと真相は分からないなと思いました。
希望よりも遠方が見えないことと、左右差が原因の不調と思われるので、より近くにピントが合ってしまっている右眼を左眼と同じくらいか、あまり差がない程度にそれよりちょっと遠めにしてあげることで、症状の改善が望めるのではと思い、レンズ交換の手術を予定させていただきました。
もう一人の方は70歳の男性で、9月にEDOFタイプの多焦点レンズを入れ、最初に行った左眼が裸眼視力0.3で『遠くが見えない』ことで困っているそうです。左眼の屈折が-1Dで単純に近視になってしまっていることが原因と思われますが、EDOFタイプのレンズは遠方から中間距離が見えるレンズで近方が見えにくいので、その不満を回避するために、少し近視めを狙ったところ、度数ズレが加わり、更に近視の値が強くなってしまって結果的に遠方が見えにくい状態になってしまったと思われます。この場合、一番、単純な方法は、その度数のズレを考慮してレンズを入れ換えることですが、セカンドオピニオンで受診した病院で後発白内障のレーザー治療をされてしまっていて、しかも、その後嚢が非常に大きく切開されてしまっているので、再度、同じ多焦点レンズへ入れ換えることはとても難しくなってしまっていました。この患者さんの場合、多焦点レンズの度数は合っていませんが、多焦点レンズそのものが合わない眼ではないので、せっかく入っている多焦点レンズを取り出してしまう必要はないですし、そのまま使う方がメリットがあると思われましたので、レンズ交換ではなく、アドオンレンズで近視ズレを修正する治療を予定させていただきました。
白内障術後の見えにくさがあると、後発白内障の可能性もありますが、後嚢を切開して開けてしまうと、レンズの種類によってはレンズ交換は難しくなってしまうので、もし、レンズに問題を抱えているような状況では、先にレンズ交換を行うことを考慮したり、もし、やはり後発白内障が見えにくさの原因の疑いが強いと思われた時は、YAGレーザーの後嚢切開は最初はなるべく小さく丸くしてあげることで、その後にレンズ交換が必要になった場合でもより高確率に交換を行うことができます。
このように白内障手術後の不具合に対して解決策は一つでない場合があります。いくつかの方法の中でメリットとデメリット(リスク)を天秤にかけ、もっともよい方法を選ぶべきです。もちろん、それでうまくいくこともそうでないこともありますし、何も方法がない場合もあります。でも、大切なことは諦めずに、可能性を少しでも探ること、前に進もうとする気持ちだと僕は思います。