今日は一日外来でした。
手術の申し込みは、白内障2人と硝子体混濁の硝子体手術1人でした。
今日の外来では、『3日前から右眼の下の方が部分的に見えにくい』という症状で50代後半の男性がいらっしゃいました。
中高年の方の“急に片眼の視野が欠ける”という症状ですが、まず考える必要があるのは、網膜剥離です。ただ、網膜剥離の場合、網膜に穴が開いて、その時に、飛蚊症が強くなったり、光を見た訳でもないのに光が見える光視症などの前駆症状があって、その後に少しずつ視野が欠けてくるような症状が典型的です。そして、診察で眼の中(眼底)を見れば、剥がれた網膜はすぐ分かります。しかし、この患者さまは網膜剥離の前駆症状も全くなく、眼底を見ても網膜剥離の所見もありませんでした。その代わりあったのは、網膜の一部が白くなっている所見でよく見ると、網膜の血管(動脈)が小さな白い塊によって詰まっているような所見もあり、“網膜動脈分枝閉塞症”という病気が疑われました。これは眼の中を栄養する網膜の動脈の枝の部分が詰まってしまい、血流が途絶え、網膜が酸欠で虚血状態になってしまう病気です。起こったすぐであれば、血管のつまり(血栓)を溶かす点滴をすることが有効な治療となる場合もありますが、時間が経ってしまうと、悪くなってしまった網膜は改善せず、症状をよくするよい手立てがなくなってしまうので、もしこの病気が起こってしまった場合は、なるべく早く受診することが大切です。
この患者さまの場合、発症から3日と時間が経ってしまっていましたが、詰まった血管が中心部でなかったため、少し視野の欠けはあるものの、視力自体の低下はなく、造影剤を点滴して血流を確認すると、血管の詰まりはあるものの、完全に血流が途絶えている訳でもなかったので、血管閉塞の悪化を防ぐ目的で血液の塊をできにくくする内服を出して経過を見ることとしました。また、不整脈や心臓の血流の滞りがあるような病気があると、血栓ができやすく、脳梗塞や心筋梗塞など全身的に重大な疾患を起こす可能性もあるので、内科での検査も勧めさせていただきました。
“視野が急に欠ける”という症状は急を要す病気の可能性があるので、あまり様子を見るのではなく、早めに受診するとよいかと思います。