今日は一日外来で夕方に霰粒腫の切開が2人(3歳女の子、4歳女の子)でした。
手術の申し込みは、白内障3人、霰粒腫2人(4歳男の子、9歳女の子)でした。
白内障手術の申し込みとなった63歳の女性の患者さまは『他院で「隅角が狭いから広げる手術をした方がよい」と言われたけれど、よく分からなくて』といらっしゃいました。
眼の中には水(房水)があり、この房水の量により眼圧が規定されます。つまり、房水が多いと眼圧が高くなってしまいます。房水は“毛様体”というところから産生され、角膜と虹彩の付け根からなる“隅角”というところから眼の外に流れていきます。虹彩の裏側には水晶体がありますが、水晶体は加齢により少しずつ濁り、白内障を生じますが、濁るだけでなく水晶体の厚みも増していきます。特に元々、遠視で眼の長さが短い人では、水晶体が厚くなることで虹彩が押され、隅角が狭くなってしまいます。この状態が“狭隅角”で、完全に隅角が閉じてしまうと、房水の行き場がなくなってしまい、眼圧が高度に急上昇してしまう“急性緑内障発作”を起こす可能性があります。急性緑内障発作を起こしてしまうと、早急に適切な対応をしないと、最悪失明してしまう深刻な状況になってしまうので、予めの予防策が大切になってきます。
狭隅角の眼の急性緑内障発作の予防策としては、レーザーで虹彩に穴を開ける“レーザー虹彩切開術(LI)”をするか、白内障手術をするかの2択になります。急性“緑内障”発作を防ぐのに、“白内障”手術というのが頭に??が浮かぶ理由かもしれませんが、白内障手術で厚い水晶体を取り除き、薄い眼内レンズに換えることで、虹彩の裏側からの圧迫が減じ、隅角が広くなり、隅角が閉じてしまう急性緑内障発作が起こらなくなります。若くてまだ白内障手術には抵抗がある人なら、LIもアリですが、LIは完全に緑内障発作を防げる訳ではないことと、LIをしている眼は将来、白内障手術うをしにくくなってしまう場合があること、50代以降では多少は白内障が始まっていることから、僕は急性緑内障発作の予防は白内障手術が第一選択の治療だと考えています。
この患者さまの隅角はそんなに狭くはなかったので、手術しないで経過観察でもよいかとお伝えしましたが、緑内障発作が心配だし、遠視が強く裸眼視力も下がって見えにくさもあることから、手術を行うこととなりました。
なかなかうまく伝えにくい話ではありますが、ご理解いただけたようでよかったです。