院長ブログ

治療の順番の考え方

今日は一日外来でした。手術の申し込みは、白内障6人、眼瞼下垂4人、霰粒腫1人(55歳男性)、眼内レンズ交換2人でした。

今日の外来では、他院で昨年、白内障手術を受け、術後に炎症が起こって見えにくいという60代の男性がいらっしゃいました。術後の炎症のせいか、所見としては、前嚢収縮、後発白内障、硝子体の混濁がありました。前嚢の収縮は結構強く、レンズも水平方向にズレが生じていましたが、ある程度の光の通るルートは確保されていたので、これをわざわざ拡げる必要はなさそうでした。そうなると、見えにくさの原因としては、後発白内障か硝子体混濁のどちらか、もしくは両方が考えられました。硝子体手術で一度に後発白内障も硝子体混濁も取ることも可能ですが、手術はしないに越したことはないので、まず、負担の少ない後発白内障のYAGレーザーをしてみて、それでも十分な改善が得られないのであれば、硝子体手術を考えたらと提案させていただきました。

治療の順番は、もちろん、一番の疑わしい原因に対することを行うべきですが、原因がこれとはっきりしないような場合やいくつか疑われる場合は、効果の高さだけでなく侵襲の少なさも考慮する必要があるかと思っています。その結果、最初の治療で思ったほどの効果が得られないこともあり、がっかりさせてしまうこともなくはないですが、大きな治療をして、あまりよくならないよりずっとよいと思いますし、その時は、次の治療をより前向きに考えられると思います。

というのが、前提ですが、もちろん、侵襲が大きくとも一番効果が得られると思われる治療や、負担は大きくともなるべく一度で治療を済ませたいという希望もあると思いますので、何を優先するかを考えて治療の内容や順番を考えることが大事だと思っています。

ちなみに、この患者さまは前の先生から『チン小帯が弱いからYAGレーザーをするとレンズがズレて大変なことになってしまう。もし YAGレーザーをするならもっと後発白内障が進んでからしたらいい。』と言われていたそうですが、必要ならYAGレーザーで後嚢を取らないといけないと思いますし、今、レンズの揺れもないので、YAGレーザーをしてもレンズがズレる可能性は高くないと思いました。そもそも、YAGレーザーの侵襲でレンズがズレてしまうと考えるなら、後発白内障が進めば、レーザーをたくさんしなければならなくなってしまうので、あまり進んでからレーザーするのは得策ではなく、逆にあまり進まないうちにレーザーをしておいた方がよいと思います。また、YAGレーザーでレンズがズレてしまうなら、普通に生活していてもズレてしまうおそれも十分あると思うので、その時はレンズを取り出して強膜内固定をすればよいだけの話だと思いました。これも考え方かなと思いますが、何を優先して、何を恐れるか、よく考えて治療を行うことが大切だと思います。

TOPへ