院長ブログ

YAGをする前に

今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障9人、眼瞼下垂1人、霰粒腫2人(1歳男の子、19歳女性)、アドオンレンズ1人でした。

今日、白内障手術の後の不具合で受診いただいた40代後半の女性は、他院で左眼の黄斑上膜で硝子体手術を受け、術後に網膜剥離を発症し、再度の硝子体手術、更にその後、白内障が出現し、白内障手術を受け、元々、両眼とも-2.5Dほどの近視だった眼を、左眼のみ単焦点レンズを遠方に合わせたところ、術後、『不同視でゆらゆらして気持ち悪い』見え方になってしまいなんとか改善できないかといらっしゃいました。

左眼に近方に合うコンタクトレンズを入れて両眼で近くを見る分には問題ないそうですが、その上から遠方用の眼鏡をかけて遠くを見ると、具合が悪いらしく、単に左右の度数差だけの問題ではなく、黄斑上膜や網膜剥離の後遺症が遠方を見る時に何かしらの悪影響を来しているのではと思われました。ただ、そう説明した上で、患者さまが“不同視を治したい”という希望が強くアドオンレンズで左眼のピントを近方に戻す治療を行う予定とさせていただきました。

白内障手術の後のピントを変える場合、眼内レンズを入れ換えれば一番、単純で根本的な対応になると考えていますが、この患者さまの場合、見えにくさの原因が後発白内障では?とされ、既にYAGレーザーで後嚢が切開されており、レンズの入れ換えがやりにくい状況になっていました。入れ換えはできなくはないと思われますが、眼には負担になってしまい、よくなるかどうか不確定な要素が強い状況では、選択しにくい治療と思いました。一方、アドオンレンズは後嚢の有無は難易度に全く影響せず、今入っている眼内レンズの上に乗せてあげればよいだけの比較的侵襲の少ない治療で、尚且つ、もし入れてうまくいかなかった時でも取り出しは容易で“後戻りができる”治療でもあり、治療効果の見通しがはっきりしない時にはしやすい治療でもあると思います(そういう点では、後発白内障のレーザー治療をしていなくとも、アドオンレンズが第一選択になったかもしれません)。

白内障の術後、しばらくはよく見えていて、徐々に白内障が進んできた時のように、霞むような見えにくさが出てきたのならば、単に後発白内障の症状と考えてよいと思いますが、後発白内障のレーザー治療をしてしまうと、眼内レンズ交換が難しくなってしまい、治療の選択肢の幅を狭めてしまうことにもなりかねませんので、白内障の手術の後の見えにくさに対して、後発白内障が原因として治療をする際には、YAGレーザーをする前に、眼内レンズは問題ないことを確認の上、よく考えて治療を受けた方がよいと思います。

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