今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障10人、眼瞼下垂2人、霰粒腫1人(1歳女の子)、眼内レンズ交換1人でした。
今日の外来では、両眼とも-10Dを超える強度近視の47歳の女性がICL手術のご相談でいらっしゃいました。ずっとコンタクトレンズを使っていたそうですが、そのコンタクトレンズの検診で角膜内皮細胞が両眼とも1100と少なく、コンタクトレンズは止めてくださいと言われてしまったそうです。近視が強いと眼鏡では物が小さく見えてしまい、コンタクトレンズの方が見え方が楽なのですが、そのコンタクトレンズが使えないために、ICLの手術ができないかと来院されました。
単に近視を治すなら、ICLの手術をすればよい訳ですが、簡単にそう言えないというか、自分の結論からすると、ICLの手術はすべきでないと考えました。その理由は、角膜内皮細胞は一旦減ると回復しないのですが、眼の中の手術をすると、多かれ少なかれ、減少します。ICLの手術は通常、それほど眼には負担にならないため、少なくとも極端には減らないと思いますが、それでも手術をすれば減る方向に働きますし、思ったより減ってしまう可能性もなくはないかと思います。
それから、40代後半ですので、今はあまりありませんが、近いうちに白内障が出てきます。そうすると、せっかくICLを入れたのに、視力が下がってきてしまいますし、白内障の手術をするときには、ICLも取り出さなければならず、このICLを抜き出す操作もいくらかは角膜にダメージを与えてしまうリスクもあります。
なので、角膜を守ことと年齢的なことを考えると、ICLを入れることはプラスはありますが、そのプラスの効果が長期には望めないことと、角膜に対するリスクから、トータルではしない方が賢明と思いました。
しかし、だからといって、この不便な状況をずっと我慢してくださいということでもなく、近視を改善して角膜の細胞を少しでも守るのに一番よいのは白内障の手術を行うことだと思います。単に白内障の状態だけ考えれば、手術にはまだ早い程度の濁りですが、白内障はほとんどの方がどこかの時期に手術が必要になってきます。もちろん、白内障の手術でも角膜の細胞は減少しますが、白内障が進行すると、水晶体が濁るだけでなく、硬くなるので、その減少の割合が若干大きくなってしまいます。なので、角膜の細胞をなるべく減らさないためにも、水晶体が柔らかい少し早めの時期に手術することは決してマイナスにはならないと思います。なので、もし近視をなんとかしたくて、角膜内皮細胞を少しでも守りたいと思うならば、白内障手術をするのが一番、効果的で合理的かとお話させていただきました。あと、ICLの費用を白内障の手術でレンズ代に回せば、より自由にレンズが選べ、経済面でもよいと思います。
ちなみに、今日は外来が8時半から始まり、終わったのは9時半でした。たった1時間!?と思いきや、終わった時間の9時半は21時半で13時間ぶっ通しの外来となりました。しかも、午前の患者さまを診終えたのが、15時で、既に午後の開始時間を1時間もオーバーしてしまったため、もちろん(と言うのがよいことは全くありませんが)、お昼休憩も無しで午後の診療に突入してしまいました。ということで、今日の外来はたくさんの患者さまをお待たせしてしまい、大変、申し訳ありませんでした。また、スタッフの皆んなも疲れてしまったと思います。ごめんなさい。