今日は午前のみの外来で、手術の申し込みは、白内障2人、ICL1人、霰粒腫1人(49歳女性)でした。
今日、白内障の術前検査で受診された50代の女性の方は、水晶体が真っ白に濁った“成熟白内障”という進行した状態でした。白内障はどんなに進行してしまっていても、濁った水晶体を取り、眼内レンズを入れられれば、十分な視力の改善を得ることができます。しかし、だからといって、『白内障は進行してから手術すればよい』ということでは決してありません。まず、眼内レンズの度数計算の精度が落ちてしまいます。眼内レンズ度数の計算には眼軸長といって、眼の長さを測る必要があります。もちろん、眼の長さはメジャーなどで直接測ることはできませんから、検査の器械を使って測定します。通常は“光学式”といって、光の反射を利用して測定しますが、白内障が進行してしまうと、光がブロックされてしまい、光学式の眼軸測定機器が使えないことがあります。そのような場合には、眼の表面にプローブを直接あてるエコー(Aモード)を使い測定しますが、10分の1ミリというレベルでバラツキが出てしまうことがあり、それがレンズ計算の精度を若干下げる要因となってしまうことがあります。また、濁りが強ければ、当然、手術も難しくなり、うまく水晶体嚢(水晶体の袋)を残せない可能性や、うまく水晶体嚢の中にレンズを収めて終えても、チン小帯が弱ってレンズの位置が通常よりも前後することがあり、これも術後の屈折に影響を及ぼしてしまうこともあります。このように、いくつかの理由で、レンズ計算の精度が落ちますので、極端に細かいピントの位置の要求は叶えることが難しいと考えていただいた方がよいかと思います。また、水晶体嚢が残せない場合は、強膜内固定(もしくは縫着術)という方法でレンズを入れなければなりませんが、当院では通常、そのレンズを入れる手術は改めて行わせていただいております。理由はいくつかありますが、強膜内固定用のレンズは通常使うレンズと別で、改めて発注する必要があることと、白内障の手術から強膜内固定へコンバートとなると、手術時間が結構かかってしまうことが多いので、申し訳ないのですが、その後に控えている患者さまのことも配慮させていただき、とにかく濁りを取るところまではしなければなりませんが、レンズを入れるのは改めて予定させていただいています。ただ、この患者さまは、できることなら、1回の手術でレンズを入れて欲しいという強いご希望がありましたので、手術の順番はその日の最後にさせていただき、強膜内固定用のレンズも準備し、手術に備えることにしました。でも、まずはなるべく普通に嚢内固定で終われるように頑張りたいと思います。
今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m