今日は午前は外来、午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障3人で、今日の手術は、眼瞼下垂3人、霰粒腫3人(3歳男の子、3歳女の子、26歳女性)でした。
今日の外来では、消化器の癌でステージ4で抗がん剤治療中の70代半ばの女性の患者さまが白内障の相談でいらっしゃいました。視力は右眼が0.3、左眼は0.5で両眼ともある程度進行した白内障があり、『ここ半年でだいぶかすんで見えにくくなった』そうです。癌があるとはいえ、言われても本当ですか?と思ってしまうほど、お元気な方でしたので、見えにくいなら、手術した方がよいと思いましたので、抗がん剤のスケジュールの合間の休薬期間にうまく手術の日程を組むことを提案させていただきました。もちろん、白内障の手術よりも癌の治療が優先ですので、治療の状況や体調によっては無理に予定通りに手術すべきでないので、様子を見ながら進めましょうとお話しさせていただきました。
患者さまから、『先生のおばあちゃんが同じ状況なら、手術しますか?』と質問されましたが、『間違いなく手術します』と答えました(もう自分の祖父母は亡くなっていますが、、、)。ステージ4の癌だと残りの人生は長くはないかもしれません。だったら、手術しないと考えることも決して間違いではないです。先が短いのに手術して医療費がもったいない、他の人に医療費を回して欲しいなんて殊勝なお考えの方もいらっしゃると思います。でも、残り少ない人生であるなら、尚更、そんなことは気にせず、自分のことを第一に考え、思い残すことなく時間を過ごして欲しいと思います。眼科医としても孫としても、余命が短くとも、その時間を少しでもよい見え方で見て過ごして欲しいと思います。例え、数週間でも数か月でも『こんなにきれいに見えるようになった』と思って時間を過ごせてくれたら、それはとても意味のある価値のあることだと思います。だから、癌のある方でも体力が許す限りは、白内障手術に限らず、人生を豊かにできる医療は受けて欲しいなと思います。
今回のブログの題名は“ステージ4の癌のある患者さまの白内障”を縮めたもので、白内障に対しては“ステージ”という言葉は使いません。ちなみに、白内障の進行度を水晶体の色調から硬さとして評価する時には“グレード”という表現を使います。水晶体は硬くなるにつれ、色が、白から黄色、茶色、褐色と変化し、5段階で評価します。よく『私の白内障はどれくらい進んでいますか?』と聞かれますが、まあまあ進んでいる白内障で『5段階中3くらいですね』というと、『まだまだ大丈夫ということですね!』と返されることもありますが、全然そんなことはなく、そもそも、グレード5まで進む方は滅多にいませんが、もしそこまで進んでしまうと手術がとても大変になり、合併症も出やすくなっていまうので、そこまで進まないうちに手術を受けるべきで、グレード2〜3くらいの手術適正時期により安全に受けていただけるとよいかと思います。