院長ブログ

角膜内皮の少ない白内障

今日は一日外来でした。
手術の申し込みは、白内障6人、眼瞼下垂2人、霰粒腫1人(2歳男の子)でした。

今日の外来では『白内障が進んで見えにくいけれど、角膜の細胞が少ないから手術をしない方がいいと言われたけれどどうしたらよいか?』と60歳の女性の方がいらっしゃいました。

角膜の細胞(角膜内皮細胞)は角膜を透明に保つのに重要で、一度、減ってしまうと二度と増えない細胞です。この内皮細胞の密度は通常2500〜3000ですが、500を切ると、角膜を透明に保てなくなり、角膜が浮腫んで濁ってきてしまう“水疱性角膜症”という状態になってしまい、この水疱性角膜症を治すとなると、角膜移植の手術が必要となってきてしまいます。白内障の手術では、手術の侵襲により角膜の細胞が1割程度減るとされていますので、角膜内皮細胞の少ない方では、手術をするかどうかを慎重に考える必要があります。ただ、白内障は進行すればするほど、手術の侵襲は大きくなります。なので、生きているうちのどこかのタイミングで手術しなければならないのであれば、白内障があまり進行しない内に手術をしてあげた方が角膜には有利に働き、角膜を少しでも温存し、水疱性角膜症にならないためには重要だと考えています。

この患者さまでは内皮細胞密度は右が800、左が600ほどあり、現時点で角膜も透明できれいなので、白内障の手術を行っても、水疱性角膜症にはならずに済む可能性も十分ありますし、遅らせることのメリットはなく、早めに手術したらよいのではとお話させていただきました。もう90歳を超える高齢であれば、そのまま白内障の手術をしなくてもそのまま天寿を全うできるかもしれれませんが、60歳で視力が下がっているのであれば、いつかは白内障の手術をしないといけなくなる時が来ますから、今のうちに手術しておく方が角膜にとってもよい選択だと思います。眼の手術、特に白内障はいつしなければいけないというものでもなく、決断が難しいかもしれませんが、色々な条件を加味して適切なタイミングで手術を受けることが大切だと思います。

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