院長ブログ

超強度近視眼の眼内レンズ

今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障2人、眼瞼下垂1人、霰粒腫1人(8歳男の子)、アドオンレンズ1人でした。

今日、白内障の術後の見え方の相談でいらした女性の方は、元々、強度近視(眼軸長30mmを超える超強度近視)で海外輸入の単焦点トーリックレンズを使った自費白内障手術を受けたものの、遠視側への度数ズレで見えにくくて困ってしまったそうです。

近視が強い方の手術で困ることは、使えるレンズの種類や度数に制限が出てしまうことです。近視が強い眼は眼の長さ(眼軸長)が長いか、角膜の屈折力(光を曲げる力)が強いかのどちらか、もしくは両方で、白内障の手術で使う眼内レンズはあまり光を屈折させなくとも網膜表面に像を結べてしまうので、眼内レンズの度数(レンズパワー)はとても弱い度数を使うことが多くなります。通常の水晶体の屈折力が+20Dなので、正視眼(元々、遠くが自然と見えるような眼)の方は、遠方にピントを合わせるならば、眼内レンズのパワーも+20D前後となることが多いのですが、強度近視の人では、+5D未満(ローパワーレンズ)で+1Dやゼロ、場合によってはマイナスの度数を使うこともあります。眼内レンズはいくつもの種類がありますが、そのレンズパワーの範囲は+5.0〜+28.0Dということが多く、もっと狭く+10.0Dからしかないレンズもあります。

眼内レンズのメーカーもあくまで商売でレンズを製造、販売していますので、よく使われるレンズは厚くしますが、中々、使われない度数に関しては、どうしても手薄になってしまうのはやむを得ないことかと思います。またローパワーレンズはレンズの光が通る光学部と支えが別の素材でできている3ピースレンズのタイプであることが多く、このレンズには乱視を矯正するトーリックタイプはないため、眼内レンズによる乱視の矯正はできなくなってしまいます。長眼軸による強度近視の場合、眼の構造自体が大きく、仮に度数的に使用可能な1ピースタイプのトーリックレンズがあったとしても、うまく固定されずよい乱視矯正が得られない可能性も十分あり、むしろ、変な位置で固定されてしまうと、乱視が悪化しかねず、ローパワーレンズはノントーリックのみというのは、ある意味、理に適っているのかなとは思います。

前置きが長くなりましたが、これはあくまで国内で一般的に使われているレンズについてで、海外のレンズはこの限りではなく、この患者さんは強度近視の上に角膜乱視も強く、乱視の矯正まで目指して、AT TORBIというレンズを使用したそうです。ただ、強度近視の方はどうしても眼内レンズの度数計算がズレやすく、残念ながら度数ズレを来してしまいました。術後間もない度数ズレには基本はレンズ交換で対応することが多く、この患者さんからもレンズの入れ換えの希望をいただきました。でも、レンズ交換する場合、国内で一般的に使われているレンズでは、度数ズレは修正できるとしても、乱視が残ってしまいます。せっかく海外輸入のレンズを使い、乱視はきれいに矯正してくれているので、そのレンズを取り出すのは勿体無いので、今、入っている眼内レンズはそのままに、遠視のズレを修正するレンズをもう1枚追加するアドオンレンズがよいのではと思いました。自費の治療でうまくいかないとがっかりしてしまうかもしれませんが、今回は、決して無駄な治療だったとい訳ではないと思いますので、その治療を生かして、なんとか満足のいく見え方にできるようにしたいと思います。

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