院長ブログ

虹彩縫合は難しい

今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術の申し込みは、眼瞼下垂1人、眼内レンズ交換 人、硝子体手術 人、霰粒腫1人(2歳男の子)でした。
今日の手術は、白内障11件、眼内レンズ交換+虹彩縫合1件でした。

今日は外傷による虹彩損傷の虹彩縫合の手術がありました。虹彩が損傷して瞳孔が広くなってしまっているので、虹彩の裂け目を縫うだけの手術で、言葉で言うと簡単そうに聞こえるかもしれませんが、結構難しい手術の一つかなと思います。

その理由は、まず虹彩という茶目の組織は非常に柔らかく脆いので、虹彩縫合はよく『豆腐を縫うようなもの』と表現されます。もちろん、豆腐なんかを縫うことは実際、ないと思いますが、なんとなくイメージはできるのではと思います。柔らかい組織なので針も簡単に刺さりませんし、糸を結ぶ時も強く引き過ぎると虹彩が千切れてしまいます。更に一般的に市販されている針や持針器で、単純に眼の中で操作できるものはないので、長い針を眼の中に入れ、虹彩に2か所針を通し、その針を反対側から一度、眼の外に出し、末端側の糸も眼の中に入れ、針を出したところから出し、そこで結び目をつくり、眼の中で糸を締めることで縫うことができます。かなり分かりにくいと思いますが、眼の中で縫合するのは結構煩雑な操作が必要になります。そして、この縫合を眼の中の約2.5mmのスペースで行わなければならず、特に眼の表面の角膜の内側の角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つのに重要ですが、容易に侵襲を受け、一旦減ってしまうと元に戻らない大切な細胞なので、この細胞を傷つけないような慎重な操作が必要になります。こういった理由で、虹彩縫合はなかなか難しいのですが、なんとか縫うことができ、瞳孔を縮め手術を終えることができたので、よかったです。僕が昭和大学藤が丘で手術を教えていただいた谷口教授はこの虹彩縫合もとても得意で、眼の外の組織を縫うかのようにきれいに虹彩を縫合されていましたが、本当にすごいことだったのだと改めて思いますし、その手術を間近で見させていただいたことで、なんとか、本当になんとかですが、手術ができているのかなと思います。あの時の経験は本当に大きな財産だなとありがたく思いますし、谷口先生に教えていただいたことを少しでも患者さんに還元することが、谷口先生への恩返しだと思って頑張りたいと思います。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

 (虹彩縫合前→後)

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