今日は午前は外来、午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障3人、霰粒腫1人(2歳男の子)でした。
今日の手術は、眼瞼下垂2人、霰粒腫2人(3歳女の子、10歳女の子)、眼窩脂肪切除、涙管チューブ挿入でした。
角膜の内側にある角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つのに重要な細胞で、その密度は2500〜3000個/㎟が正常とされています。
白内障の手術をすると、角膜内皮細胞は1割程度減少するとされており、正常の角膜内皮細胞であれば問題になることはまずありません。しかし、元々、角膜内皮細胞が少ない方や進んだ白内障で侵襲が大きな手術になってしまうと、角膜内皮細胞の数が減り、その密度が500を切ると、ポンプ機能に支障を来たし、角膜が浮腫んで濁ってきてしまい、“水疱性角膜症”と呼ばれる状態に陥り、治療としては、角膜移植が必要となってしまいます。
今日、白内障手術のご相談にいらした80代前半の女性の方は、滴状角膜という状態の眼で、角膜内皮細胞が右650、左890程度と少なく、お近くの眼科では『手術はしない方がよい』と言われ、どうしたらよいかと困って相談に来たそうです。
どうしなければならないという正解はないですが、基本的には手術をした方がよいと思っています。例えば、白内障があっても90歳で視力1.2で不自由がないという方であれば、そのまま白内障の手術をすることなく一生を終える可能性も十分ですので、角膜の数が少ないのに、無理に白内障の手術を受けることはないかと思います。しかし、80代前半でこの先、まだもうちょっとは使う眼で、現時点で見えにくさを感じているならば、どこかでやっぱり白内障の手術をしなければならないというタイミングが出てくると思います。もちろん、そうなったら手術をするというのも考えの一つですが、その時の白内障は今よりも進行し、角膜の細胞に対する手術のダメージも当然、大きくなります。であれば、なるべく侵襲が少なく済む早い時期に手術をしておいた方が、結果的には角膜の細胞を少しでも守ることにつながると考えています。仮定の話になりますが、今、手術を受ければ、角膜移植が必要にならなくて済んだとしても、10年後に白内障が進行して手術を受けると、角膜の細胞が減って角膜移植が必要になってしまうこともあるかと思います。また、もし、仮に、角膜移植が必要になった時、90代でだと、そこまでするかという問題も出てくると思いますが、まだ体力のある80代くらいのうちなら、角膜移植の手術も受けやすいかなと思います。
ということで、角膜内皮細胞が少ない人で、白内障の見えにくさを感じ、手術をどうしようか迷っている方は、悩むより、先延ばしにしないで白内障の手術をしてあげた方がメリットは大きいのではと思います。もちろん、手術をするならば、普通の方よりも角膜内皮細胞に負担のかけない手術をすることが大事で、僕はそう心掛け、なるべく角膜内皮細胞を減らさないように、角膜移植にならなくて済むように手術したいと思っています。