院長ブログ

レンズ入れ換えしにくい所見

今日は午前は外来、午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障4人、眼瞼外反症1人、黄斑上膜の硝子体手術1人、霰粒腫1人(35歳女性)でした。
今日の手術は、眼瞼下垂3人、睫毛電気分解1人、霰粒腫3人(6歳男の子2人、49歳女性)でした。

今日の外来では当院で7月に両眼の白内障の手術を行った50代の女性の方の経過観察がありました。この方は元々、-8Dくらいの強度近視で、遠方めに合わせたところ、裸眼視力1.2で近方30cmの視力は0.2〜0.3と思った以上に見えにくく、レンズの入れ換えの相談を受けました。通常、術後1か月くらいでは、レンズの入れ換えは全く問題なくできることが多いのですが、この患者さんの場合、レンズの入れ換えをしにくい所見が見られました。レンズ交換でよく言われるのが、『癒着すると難しい』ということですが、確かに癒着がない方が入れ換えはしやすく、癒着していると入れ換えが難しくなります。ただ、それが一番の問題ではないと僕は考えています。癒着が強くても、チン小帯さえしっかりしていれば、ほとんどの場合、入れ換えは可能です。しかし、チン小帯が弱ければ、軽度の癒着でもなかなか剥がしにくくなってしまうこともありますし、うまく癒着が外せてレンズを取り出すことができても、新たなレンズがうまく入らなくなってしまうこともあります。

レンズがグラグラ揺れるレンズ振盪の所見があれば、チン小帯が弱いのは明らかで、そのような状況では入れ換えはかなり厳しいというか、無理と考えた方がよいですが(単純な単焦点レンズで強膜内固定前提であれば可ですが)、レンズ交換をするにあたって、その難易度の指標にしているのが、前嚢収縮です。白内障の手術の時に水晶体の表面の水晶体嚢を丸く切り抜きますが(連続円形前嚢切開:CCC)、一般的な眼内レンズの直径が6mmなので、僕はこのCCCの大きさは直径5.5mmを目指しています。そうすると、レンズの縁がわずかに前嚢で覆われるような状態になりますが、水晶体嚢にはわずかに水晶体上皮細胞が残り、時間の経過で多かれ少なかれ、水晶体嚢の濁りを生じます。前嚢にこの濁りが生じると、前嚢を収縮させ(前嚢収縮)、CCCの大きさが小さくなる方向に進みます(後嚢側の増殖が強くなれば、後発白内障になります)。とはいっても、通常は前嚢に濁りが生じてもそれほどCCCの大きさは変わらないのですが、チン小帯が弱いと、おそらく、外側に引っ張る力が弱くなるため、前嚢収縮が強くなり、CCCが小さくなる傾向があるかと思います。なので、前嚢の混濁や収縮が強いということはチン小帯が弱い可能性が高く、レンズの入れ換えがしにくく、手術が大変になる可能性を示していると考えています。もちろん、絶対に入れ換えできないということではなく、どうしてもの場合は、手術もしますが、うまくいかない可能性、具体的に言うと、チン小帯が外れて、レンズを眼の壁に固定する強膜内固定をしないといけなくなる可能性はそれなりに覚悟が必要かと思います(その確率が何%ということはなかなか言えないですし、具体的な数字があったとしても、それはあまり意味のないことだと思います)。

なので、この患者さんには、もし度数を変えるならば、レンズの入れ換えよりはアドオンレンズやレーシックの方がよいと思いますとお伝えしました。

逆に言うと、前嚢の混濁や収縮があまり出ていない場合は、時間が経っていてもそれほどリスクなく入れ換えられるかと考えています。

あくまで僕の感じることで、絶対ではないですが、単に初回の白内障の手術からの時間ではなく(多くの先生は時間が経っていると難しいとおっしゃる場合が多いように思いますが)、その辺りを根拠に、レンズの入れ換えができそうか、難しそうか、話しているつもりです。

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