神奈川新聞の『教えて‼︎ドクター Q&A』のコーナーで質問に答えさせていただきました。今回は霰粒腫についてです。新聞でお読みいただいた方もいらっしゃるかもしれませんが、記事の内容をブログにも転載させていただきます。いつも『いい質問ですね!』と思うことを聞かれるので、皆さんの参考になるとうれしいです。
Q;霰粒腫とはどんな病気ですか?また、どのようなときに手術が必要なのですか?
A;まぶたの縁にある「マイボーム腺」という脂を分泌する組織が、何らかの原因により閉塞してまぶたの中に脂が貯留し、この脂の成分が分解される際に肉芽腫という肉の塊のようなしこりができてしまう病気が「霰粒腫」です。よくものもらいと混同されますが、ものもらいの正式名称は「麦粒腫」で、まぶたに細菌が感染し炎症を起こして腫れている状態を指します。麦粒腫が起きた後に、マイボーム腺が詰まり霰粒腫ができることもありますし、霰粒腫のでき始めに炎症を伴うと、まぶたの腫れが目立ち麦粒腫のように見えることもあります。麦粒腫は基本的に抗菌薬や抗炎症薬の点眼や内服で治ります。霰粒腫でも、炎症を伴っている場合は、初期治療として麦粒腫同様に点眼や内服での治療を行うこともあります。霰粒腫のでき始めであれば、これで治ってしまうこともありますが、一度しっかりとしこりができてしまうと点眼や内服、軟膏では治りません。このしこりを治すには、切開手術が必要です。
ただ、すべての霰粒腫で切開をしなければならないということはなく、まぶたの奥にできた小さなしこりであれば、徐々に体の反応で治ってくれることもあり、経過観察でよいこともあります。しかし、しこりが皮膚側に大きく成長すると、まぶたの縁の形が曲がる、二重の線が変わる、まつ毛が抜けるなどの悪影響を及ぼし、放っておくと不可逆的な変化を起こしてしまうこともあり、積極的に切開した方がよい場合があります。小児の場合に、切開すると傷が残ると心配される親御さんもいらっしゃいますが、霰粒腫を残しておくことでも、火傷のケロイドのような跡を残してしまうこともあります。確かに最初は当然傷ができますが、通常は時間の経過で傷は目立たなくなります。
大人の切開では局所麻酔のみで十分ですが、小児の場合は局所麻酔のみでは不安や恐怖から泣いて暴れてしまうことが多く、全身麻酔や鎮静剤の内服での切開が行われます。また、小児には局所麻酔もしない方がよいという考えで無麻酔切開が行われることもあります。全身麻酔は大学病院などの大きな施設で入院が必要になり大掛かりになってしまうこと、鎮静剤内服ではやや効き目が弱く泣きながらの処置になってしまうこともあること、無麻酔ではトラウマになってしまうことなど、それぞれのデメリットがありますが、いずれの方法でも、切開が必要な霰粒腫は適切な時期にきちんと切開して治すことが重要です。