院長ブログ

眼内レンズの濁り

今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障7人と霰粒腫2人(3歳女の子、31歳女性)でした。

今日、外来を受診された50代後半の女性の方は、10年くらい前に他院で多焦点レンズを使った白内障手術を受け、1年くらい前から左眼が見えにくくなり、また違う医院を受診したところ、後発白内障と眼内レンズの濁りを指摘され、レンズの入れ換えを提案され、当院に相談にいらっしゃいました。

眼内レンズはAlcon社のReSTOR(レストア)という2焦点レンズが入っていました。このレストアの元となるAcrySof(アクリソフ)というレンズは、手術で眼の中に入れた後、しばらくしてレンズの表面や内部に水泡が現れることで、“表面散乱”や“グリスニング”と呼ばれるレンズの混濁を生じるとされています。以前、他のメーカーの眼内レンズでカルシウムの沈着により視機能、つまり見え方に影響を及ぼしてしまうレンズが問題になったことはありましたが、このアクリソフの濁りは視機能には影響しないとされており、基本的にレンズの入れ換えをする必要はありません。

この患者さんは、『将来的にレンズの入れ換えが必要になるなら、YAGレーザーをする前に入れ換えたい』とおっしゃっていましたが、両眼のレンズともに今でも濁りは十分出ており、後発白内障のない右眼の見え方は全く悪くないと感じていらっしっていますので、基本的には見え方は悪くならないとお伝えし、左眼のYAGレーザーを行う予定とさせていただきました。

現在使われているレンズは半永久的に濁らない(視機能に影響するような濁りは出ない)とされていますが、特に多焦点レンズは発売されて数年、短いものでは数か月というものもあり、実際に何十年も経過を見て、そう言われている訳ではなく、負荷試験といって短い期間で何十年分もの経過の負荷をかけられるような実験系で、“濁らない”と判定されたレンズが使われています。なので、実際の経過や何か特殊な環境下ではまた違った反応が起こりレンズの濁りが生じる可能性もゼロではないかもしれませんが、それを言ったらキリがないというか、新しいレンズを使えなくなってしまいますので、現在の科学を信用するしかないのかなと思います。

それから、この患者さんはご自分の眼の写真を見せてもらった時に『レンズが黄色く濁っていて心配になった』ともおっしゃっていましたが、このレストアもそうですが、日本で使われているレンズは着色レンズが多く、黄色のレンズが一般的なので、レンズが黄色いことは全く心配しなくて大丈夫です(この方が見え方が自然といわれています)。

 

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