今日は午前のみの外来でした。
手術の申し込みは、白内障3人、黄斑上膜の硝子体手術1人、眼内レンズ交換1人でした。
今日、白内障術後の不具合で受診された60代半ばの男性の方は、2か月前に他院で左眼の白内障手術を受けたそうです。事前の打ち合わせではレンズのピントを近方に合わせることになっていたものの、術後に近くが見えにくいので担当医に確認したところ、『中間にあわせている』と言われたそうです。
ただ、これはおそらく、単に間違えてという訳ではなく、アイハンスが使われていたので、中間合わせでも近方はある程度見えることが多いので、患者さんがより広い範囲を見えるようにと敢えて中間合わせにしたのではと思われました。
アイハンスは通常の単焦点レンズよりは広く見える構造をしていますが、レンズというのは見える幅が何m、何cmありますというものではなく、遠方に合わせると距離としては長く、近方に合わせると短く、合わせた位置により、その幅の距離は変わってきます。また、患者さんによって、その効果が出やすい眼とそうでない眼もあるようにも感じています。なので、アイハンスのような単焦点だけれど、焦点の幅があるレンズでのピントの設定は若干難しく、あまり期待し過ぎると、結果的に見たいところが見えないということにもなりかねません。
それを防ぐためにも、基本的には一番診たい距離はそこかを明確にし、そこから遠めと近め、どちらが見えると便利かということを考慮して、僕は度数を選ぶようにしています。
今日の患者さんの場合、基本はスマホや本が読めるように近くが第一の希望で、50cmくらいまで見えるといいなとおっしゃっていたので、目標の屈折としては、-2D狙いくらいにしてあげると、パソコンの距離から手元はある程度、しっかり見えるようになるかと思います。50cmくらいまで見えればいいということであれば、中間合わせの-1Dでもよいですが、手元の細かい文字などは裸眼だとちょっと厳しいと感じてしまうことが多いかなと思います。
ちなみに、この患者さんの場合、中間合わせに加えて、度数ズレもあり、ある程度、遠方にピントが合うような軽い近視の状態でより近くが見えにくい感覚があるようにも思えました。
このようなピントの位置の決め方は、医師と患者さんで意図するところが微妙にズレが生じることがどうしてもあるかと思います。患者さんからすると、自分はしっかり伝えたのに思ったような見え方にならないのは医師のミスではと思うかもしれませんが、僕自身の患者さんでもそういうことはどうしてもありますし、ミスとか間違いではないと僕は考えています。眼内レンズはメガネのように試し掛けができるものでもないですし、食べ物のように味見ができるものでもありません。患者さんはイメージすることしかできないですし、僕らも手に入れられるデータと経験からでしか想像することはできません。そして、両者が意見をすり合わせて、一番よいと思うレンズを選ぶ訳です。きちんと話し合い、打ち合わせをすればうまくいくことが多いですが、それでも100%はあり得ないと思っています。少しでもうまくいくようにするには、患者さんは希望を明確にすることで、なるべく、それを具体的に医師に伝えることが大事だと思っています。あと、あまり欲張り過ぎないことも大事で、遠くも見たいけれど、近くもしっかり見たい、でも、ハローグレアはイヤだとなると、そんなレンズは今のところないので、どこかしらを削らなければならなくなり、その削る部分が本当は一番大事なところになってしまったりすると、結果的に、残念な見え方になってしまうこともあるかと思います。なので、自分の見え方で何が一番大事かをはっきり考えていただきたいと思います。
今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m