今日は午前が外来で午後は手術で、手術の申し込みは霰粒腫1件(51歳女性)、今日の手術は白内障15件(iStent1件併用)でした。
今日、外来を受診された50代の女性の方は、検診で“視神経乳頭陥凹の拡大”を指摘されていらっしゃいました。
視神経乳頭というのは、眼の内側の網膜が一つに集まって視神経を作り、視神経が眼から脳に進む出口の部分が丸くなっているので、視神経“乳頭”と呼ばれます。そして、その視神経乳頭の内部には窪みがあり、これが視神経乳頭“陥凹”です。この視神経乳頭の陥凹は通常、視神経乳頭に対して半分以下ですが、この窪みが大きくなっている状態が、視神経乳頭陥凹“拡大”という所見です。
検診の眼底写真の検査ではよくみつかる異常所見ですが、この視神経乳頭陥凹拡大があれば必ず悪いということではなく、精密検査を行い、病的かどうかを判断することが必要になります。視神経乳頭陥凹が大きくなる病気として、注意しなければならないのは、緑内障で、緑内障になると視野が悪くなるので、精密検査として視野検査を行います。
近視が強い人では、眼の構造的に視神経乳頭の陥凹が大きく見えることもあり、視野検査を行っても何も異常がないこともありますが、この方の場合、実際に右眼は中心部の周りに弓状の視野欠損を認め、また、その視野欠損に一致して、網膜が薄い所見(NFLD;網膜神経線維層欠損)があり、緑内障による変化と考えられました。
緑内障の治療としては、眼圧を下げる必要があり、基本的には点眼薬を使用します。眼圧を下げる点眼薬はいくつかありますが、継続して使っていくため、1日1回で済むようなものから始めるようにしています。また、点眼は合う合わないがあり、眼圧が思ったより下がらなかったり、アレルギー反応を起こしてしまうようなこともあるので、まずは1本処方して1か月程度経過を見させていただき、問題なければ追加で処方するようにしています。よく使われるプロスタグランジン製剤(PG剤)やRhoキナーゼ阻害薬などでは薬剤の性質上、充血が出やすいですが、あまりにひどいと感じる場合は、他の点眼の使用を考えたらよいかと思います。
眼圧をどれくらい下げればよいかという目標値の設定も大事になってきますが、単に緑内障の点眼薬を使っていればよいとか眼圧が2とか3下がればよいというものではなく、“視神経に負担がかからない程度まで”下げなければなりません。これを評価するには、定期的に視野検査を行い、視野欠損の悪化がないかどうかを見ながら判断するようになります。なので、例えば眼圧が1〜2mmHg程度の降下でも視野が悪くならなければ大丈夫ですし、5mmHg下がったとしても視野検査で悪化の傾向が見られるのであれば、更に眼圧を下げる必要があります。眼圧を更に下げるには、点眼薬を追加していきますが(2種類合わさった合剤もあるので、本数が増えない場合もありますが)、点眼の種類にも限界あり目一杯の点眼を使っても目標眼圧に達することができない場合は、レーザー治療(SLT)や手術などの外科的治療を行い、眼圧を下げるようになります。
緑内障は自覚症状がないことも多いですし、治療も分かりにくいところがありますが、長く治療を継続しなければならないので、ご自分の病気のことや治療の必要性をご理解いただき、通院いただけるとよいかなと思います。
今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m