院長ブログ

度数ズレの可能性

今日は午前は外来、午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障6人と霰粒腫1人(6歳女の子)でした。
今日の手術は、眼瞼下垂3人、霰粒腫3人(1歳男の子、5歳女の子、10歳女の子)、眼瞼皮膚腫瘍切除1人でした。

手術の前には手術についての説明(IC)を行い、手術の同意書にサインをいただきますが、今日、術前説明をさせていただいた80代前半の男性の方から『眼内レンズの度数がズレる可能性があることが納得できない。ズレた時の保証してくれないならサインできない。』と言われました。

確かに、これだけ医学が発達した現代で計算がズレるようなことがあるのかというのは疑問かと思いますが、残念ながらそうはいかない現実があります。

眼内レンズの度数計算ですが、あくまで“予測”計算です。角膜のカーブの具合や眼の長さ(眼軸長)、前房の深さ(角膜から水晶体までの距離)などから、この度数のレンズを入れると、屈折はこの値が予測されますという値を理論式を用いて出します。人によっては角膜の状態が不安定で測定の誤差が出ることもありますし、眼軸長さも定規やメジャーで直接測る訳にもいきませんので、器械で間接的に測定することになります。前房深度も眼内レンズの位置が屈折に関わるので、重要な要素ではあるのですが、術後のレンズの位置は術前の前房深度だけで決まるものでもないところもあります。

度数ズレした時の保証についても、白内障の手術は水晶体の濁りを取り、眼内レンズを入れることが目的の手術になり、保険で、見え方まで保証されるものではありません。度数ズレが起こって思ったような見え方でなかった場合の対応は眼鏡で見え方を調整することが基本になります。ただ、どうしても裸眼で見え方を改善したいという希望がある時には、レンズの入れ換えもさせていただきますが、レンズの入れ換え手術は自費の診療で対応させていただいており、費用がかかることはご理解ください。

今月、白内障の手術を受けた同じくらいの年齢の方が、術後の経過観察で『よく見えるようになって人生が変わりました』とおっしゃっていたのが、対照的で、人それぞれの考え方で、どのような人生を過ごすかがだいぶ変わってくるのだろうなと思いました。ただ、これもあくまで僕の考え方で、同じ経過、結果であっても、よいと感じる人もいれば、よくないと感じる人もいますので、強制はすることはできないのですが、手術した方がよいと思う人にはきちんと伝えていきたいと思います。

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