今日は午前のみの外来で、手術の申し込みは、白内障4人、眼瞼下垂1人、眼内レンズ交換1人でした。
今日も白内障術後の相談で二人の方がいらっしゃいました。
一人は、60代の男性の方で昨年12月に他院で右眼の白内障の手術を受け、単焦点レンズで近方に合わせたところ、近くしか見えずに困ってしまってレンズの入れ換えをご希望されました。
元々、術前の裸眼視力は右眼が0.6、左眼が0.2ほどで、室内での生活はあまり不自由がなく、右眼のピントを左眼と揃えることを希望したところ、術後は遠方が思った以上に見えにくくなってしまったそうです。実際、現在の右眼の裸眼視力は0.2でピントの位置も30〜40cmに合っており、手術としては予定通りの大成功であったと思われ、手術をしてくださった先生からのお手紙にも、ピントの位置についてはよく話し合った上で決めたと書かれていました。患者さんご本人もそのことはよくご理解され『私のミスです』とおっしゃっていました。自分で間違った選択をしてしまったと思った場合、もちろん、仕方ないとそのまま受け入れて生きていくことも選択の一つではあると思いますが、間違ってしまっても、やり直すことができるなら、そうすることもまた選択の一つだと思います。
この方の場合、角膜内皮細胞が1000程度と少なく、入れ換えの手術で減ってしまい、角膜が濁ってしまう水疱性角膜症になってしまう可能性もあり、慎重に考える必要はありますが、元々、細胞の数が少なく、白内障の手術後に極端に減った訳ではなく、むしろ維持できているくらいですので(初回の白内障手術がとても丁寧な手術だったのだと思います)、もちろん、絶対ということはありませんが、入れ換えでも水疱性角膜症にならない程度の角膜内皮細胞は維持できるのではと思い、今の見え方に不便を感じ、ずっとこのままでは辛いと思うのであれば、入れ換えの手術を考えてもよいのではとお話させていただきました。
もう一人は50代の女性の方で他院で単焦点近方合わせの白内障の手術を受けたところ、遠方用の眼鏡で近くが見えにくく、遠近両用眼鏡も使いにくく、多焦点レンズへ入れ換えてもよいのかなと相談にいらっしゃいました。この方は元々、強度近視で、単焦点レンズで近方に合わせるのもよくある選び方ではあり、事前の打ち合わせ通りの手術で、検査の結果や眼の中の所見を見る限り、経過自体は何ら問題ないように思えました。しかし、現実的には必ずしも予定通りだから見え方がよいとは限らないところが難しいところで、この方もまだまだお若いですし、今の見え方に不便さを感じるのであれば、何らかの対応をしてもよいのではと思われました。ただ、単純にでは、多焦点に入れ換えましょうというのも安易ではあり、強度近視の眼の場合、将来的に緑内障や網膜剥離などの眼の疾患も出やすく、結果的に単焦点レンズの方が有利である可能性もありますし、遠方の視力をあまり求めず、軽度の近視でも強度の近視状態からすれば、遠くがよく見えると感じ、尚且つ、近方もある程度の大きさの文字であれば、それなりに見えるくらいの近方視力を保てることもあり、アイハンスなどの焦点の幅のある単焦点レンズの軽度近視合わせを選択することも方法の一つかと提案させていただきました。また、既に単焦点レンズでピントの合った位置に関してはスッキリとした見え方を体験しているため、多焦点レンズへ入れ換えると、コントラストの低下やハローグレアがより気になってしまう可能性も少し危惧されました。もちろん、そういったことをご理解いただいた上で、遠方も近方もなるべく広い範囲を見えるようにしたいと思うのであれば、多焦点レンズに入れ換えることもアリはアリだと思います。ちなみに、単焦点の眼を多焦点化するには、もう一枚多焦点用のレンズを追加で入れる“アドオンレンズ”という選択もあり、多焦点レンズへの入れ換えの手術代よりは費用がかからないですし、入れ換えよりも手術の眼の負担も少なく、時期も白内障手術からしばらく経っていても問題ないため、なかなか決断ができず時間が経ってしまった場合には多焦点アドオンレンズもよいのではとお話させていただきました。
今日のお二人はいずれも単焦点でピントを近くにしたことで困ってしまったようですが、単に近くにしたことが悪い訳でもないですし、もちろん手術がよくなかったということでも、患者さんがいけなかったということでもないと思います。何事にも通じることかもしれませんが、どんなによく考えて想像しても、実際はやってみるまで分からず、思ったのと違ってしまったということはどうしてもあることだと思っています。もちろん、それを避けるための努力、僕ら医療者側も手術を受ける患者さん側にもお互い必要なことではありますが、そうした上でも困ったことが起きてしまった時は、次はどうしたらよいかを考えることがより大事なことだと僕は思っています。もちろん、できることもあれば、そうでないことも、よくなるようにと思ったにも化変わらず、うまくいかないこともありますが、少しでもよくなるように、患者さんと一緒に頑張りたいと思います。
それから、今日は先週、霰粒腫の切開をした5歳の女の子の抜糸がありました。抜糸は、そんなに痛くはなく、糸を引っ張る時にちょっとチクっとする程度なのですが、怖くなってしまう子もいてどうかなと思っていましたが、頑張って泣かずにできてよかったです。診察が終わった後には手紙をくれました。こちらこそ、頑張ってくれてありがとうです。
今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m