院長ブログ

入れ換え手術のポイント

今日は午前は外来、午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障3人で、今日の手術は、眼瞼下垂2人、霰粒腫6人(3歳女の子、6歳女の子、22歳女性、36歳女性、47歳男性、52歳女性)でした。

昨日の手術では、パンオプティクスからアイハンスへの入れ換えがありました。レンズの入れ換えでは、まず水晶体嚢にレンズが癒着しているので、これを粘弾性物質(OVD)を使って剥がしますが、この方の場合、前嚢とレンズがぴったりくっついてしまっていて、通常使う鈍針では隙間ができなかったので、鋭針を使って強制的に前嚢とレンズと間を剥がし、その隙間からOVDを注入し、剥離を進めました。

レンズの光学部は簡単に剥がれますが、難しいのは支えの先端の部分の癒着の剥離です。この部分は虹彩の裏で直接見ながら操作することができないので、水晶体嚢の赤道部をイメージしながら、針の先端で探りながら、OVDで丁寧に、十分に剥離しなければならず、剥離が不十分な状態で、無理にレンズを取り出そうとすると、水晶体嚢の支えが外れてしまい、単純なレンズ交換が難しくなり、強膜内固定という方法で新たなレンズを入れなければならなくなってしまうこともあり注意が必要です。この方の場合も、なんとか支えの癒着も剥がすことができましたが、ちゃんと剥がれたかどうかを確認するためにもレンズを動かすときは力が加わりやすい、フックで動かすより、力が加わりにくい鈍針を敢えて使うことで、癒着がしっかり剥がせているかを確認できるかと思っています。また、剥離が不十分でも、一見、癒着が剥がれてレンズが動かせているように見えることがありますが、水晶体嚢ごと動いていることもあるので、レンズの動きだけでなく水晶体嚢も一緒に動いていないかを注意して見ることも大事だと思っています。

レンズがフリーになり、あとはレンズを取り出して、新たなレンズを入れれば済みますが、この方の場合、水晶体嚢の前嚢の切開部分が小さく、収縮していましたので、このまま取り出すと、水晶体嚢に余計な負担をかけてしまう恐れがあったので、前嚢切開を拡げてからレンズを取り出し、新たなレンズを入れました。初回の白内障の手術の時の水晶体嚢は柔らかく切り口を作り引っ張ることで前嚢切開は拡がりますが、時間が経った水晶体嚢は硬くなってしまうので(個人差があると思います)、眼内用のはさみできっかけを作って、その部を引っ張っても全く拡がらないので、無理せずはさみで切っていかなければなりませんでした。ギザギザに切れ目ができてしまうと、その後の操作で水晶体嚢の損傷につながることがあるので、切開の先端をなるべくつながるように切ることが大切だと思いますが、幸い、きれいに拡げられたので、その後のレンズの摘出と挿入が大分楽にできました。レンズの取り出しと挿入は柔らかい水晶体嚢であれば容易ですが、硬く小さな前嚢切開の水晶体嚢では、全然違うので、無理せず前嚢切開を拡げることも重要な操作だと思います(同じウエストでもストレッチのジーンズは履けても普通のジーンズでは履けないのと一緒で、その時はウエストのサイズを上げてあげるしかないようなものです)。

というように、この方のレンズ入れ換えは、前嚢とレンズの癒着、支持部先端の癒着、小さく収縮した前嚢切開と、入れ換えが難しくなる3つのポイントがありましたが、なんとかうまくクリアでき、ちょっと時間はかかりましたが(20分くらいかかりました)、無事に目的のレンズに入れ換えられてよかったです。

あとは、見え方がしっかり改善してくれるといいなと思います。

今日も手術お疲れ様でしたm(_ _)m

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