最近、問い合わせが増えている内容に『眼内レンズの交換』ということがあります。
(いきなり『眼内レンズを交換してください!』と言われる訳ではありませんが、、、)
『眼内レンズの交換』とは白内障の手術の時に入れる眼内レンズをまた違うレンズに入れ換える処置のことです。
なぜこんな処置をするかというと、白内障の手術の後、『思っていたのと違う見え方になってしまった』ということがあるからです。
どうしてそんなことが起こってしまうかというと
①眼内レンズの計算がズレてしまった
②説明が足りなかった
③多焦点眼内レンズが合わない場合がある
というのが主な理由だと思います。
①に関しては、眼内レンズの度数は手術の前の眼のデータから計算された度数を選ぶのですが、あくまで『計算』なので計算通りにいかない場合がどうしてもあります。
特に近視や遠視が強い方、ハードコンタクトレンズを使用している方、レーシックなどの角膜の手術をされている方では予想してがズレやすい傾向にあり注意が必要です。
②が一番多い理由かもしれませんが、医師側は十分説明したつもりでも、その内容が十分、伝わっていなかったり、誤解されて伝わってしまったりすることがあります。
元々、近視で近くを見ることは困っていなかったのに、手術の後、遠くは見えるようになったけれど、近くが見えなくて困ってしまったり、多焦点レンズを入れてもらったけれど、遠くから中間が見えるタイプのレンズで近くが見えなくて不自由を感じてしまうといったケースがあります。
医師は患者さまのことを考えて、よいと思って、十分説明したつもりでも、眼内レンズのピントの話は分かりにくい話でもあるので、どうしても誤解が生じ、うまく伝わらないことがあります。
③は多焦点眼内レンズで一番、難しい問題かもしれませんが、白内障以外の眼の病気が(見た目や検査からは)全く無いにもかかわらず、視力が出にくい方がいらっしゃいます。
多焦点眼内レンズは光を遠方、近方、中間のピントに分けるため、それぞれで使える光の量が少なくなります。そのため、くっきり見える程度が下がる(コントラスト感度が下がる)ことで若干ぼやけた見え方(waxy vision)になるといわれています。
ごくまれに網膜の器質的疾患(見た目で分かるような病気)がなくても網膜の力が弱い方もいらっしゃり、このような方で多焦点レンズを使うと視力が改善しなかったり、手術の前より視力が下がってしまうこともあるかと思います。
このようなことが原因で、手術の後の見え方が『思っていたのと違う』『これでは不便』と感じてしまうケースがある訳です。
この問題を解決するには、メガネやコンタクトレンズを使うことが苦でなければ矯正すればよいのですが、裸眼での見え方を改善するには、レーシック、アドオンレンズ、眼内レンズの交換が治療の選択肢になります。
それぞれの治療にメリット、デメリットはありますが、白内障の手術で『眼内レンズの度数、種類によるトラブル』と考えると、眼内レンズの交換が一番、理にかなった手段かと思います。
開業前、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院や上白根病院にいた時には、眼内レンズの入れ換えを希望して受診される患者さまはほとんどいませんでしたが、当院では開業してこの1年間だけでも5〜6人の方が受診されています。当院で初回手術した方と合わせ今までに計13件の眼内レンズ入れ換えの手術を行いました。
すごく多い訳ではないと思いますが、ある一定数の患者さまは入れ換えを必要とされているのではと感じています。
入れ換えをしないで一度の手術で済むのがもちろん理想ではありますが、現在の技術ではレンズの度数や種類が合わないケースも出てくる可能性はゼロにはできないと思っています。
そんな時にその状態をずっと我慢していただくのではなく、患者さまの希望に応じて、眼内レンズを交換することも大切な治療の一つかと考えています。
もし、白内障の手術の後の見え方で困っていたり、不自由を感じていらっしゃる方は解決策を考えますので、ぜひご相談ください。
↑眼内レンズ交換の時に3つに分割して取り出したレンズ