僕が好んで使う眼内レンズにレンティスコンフォート(LENTIS Comfort;参天製薬)というレンズがあります。
最近、患者さまから『レンティスについての情報が少ないんです』というお話があったので、当院での使用経験について書いてみたいと思います。
この『レンティスコンフォート』(以下、レンティス)は扱いとしては完全に保険診療の適応される単焦点眼内レンズになりますが、『低加入分節型眼内レンズ』と呼ばれ、半分が遠方に合うようなレンズ、もう半分に+1.5Dという加入度数(少し近くが見えるような度数)が入ったプレート状のレンズです。
この加入度数により焦点の幅ができ、遠方から中間距離をクリアに見ることができるレンズです。
遠方から中間が見えると書きましたが、これは使い方により、例えば遠くを1mくらいに合わせると、遠方は若干見えにくくなりますが、中間から手元をよく見えるようにすることも可能です。
これから、実際にレンティスを使った白内障手術を受けてくださった患者さま(59歳男性)の経過について書かせていただきます。
<術前の状態>
右眼 裸眼視力 0.5 矯正視力 1.2 -2.5Dの近視
左眼 裸眼視力 0.7 矯正視力 0.8 -0.5Dの近視
両眼に白内障を認めましたが、白内障の強い左眼の手術をすることになりました。
<2019年12月 左眼白内障手術>
左術後視力 遠方距離 1.2 中間距離(70cm) 1.0 近方距離(30cm) 0.7
左眼の手術後は白内障の残る右眼の見えにくさが気になるようになり、右眼の白内障手術も行うことになりました。
<2020年1月 右眼白内障手術>
右術後視力 遠方距離 1.2 中間距離(70cm) 1.0 近方距離(30cm) 0.6
<術後半年 最近の視力検査の結果>
右眼 裸眼視力 遠方距離 1.2 中間距離(70cm) 1.2 近方距離(30cm) 0.7
左眼 裸眼視力 遠方距離 1.2 中間距離(70cm) 1.2 近方距離(30cm) 1.0
<患者さまご自身の感じ方>
『遠くから中間はすごくよく見えます。近くは文庫本を読んだり、細かい字を見る時は弱い老眼鏡を使っていますが、普段はあまり困っていません。』
というとても良好な経過となっています。
ちなみに、趣味がスキューバダイビングで手術の後は見え方も改善し、裸眼で海に潜れるようになり、見るものもすごくきれいになり、ダイビング中の操作などもとても楽になったそうです。(今はコロナの影響で海に行かれず残念がられていました、、、)
↑患者さまからいただいたダイビング中の素敵な写真です!ありがとうございます!
この患者さまのケースが全てではありませんが、ほとんどの方が同様のとても良好な見え方をされていて、個人的にはとてもよいレンズと感じています。
また、片眼を遠方から中間、もう片眼を中間から近方に合わせ、両眼で見ることで遠くから近くまで眼鏡なしで見ることが可能な経過の患者さまもいらっしゃいます。
保険の単焦点レンズをお考えの方で
・ピントを1か所に決められない(遠くも見たいが手元が全く見えないのは困る)
・パソコンなどの中間距離の作業も多い
・水泳、ダイビング、ゴルフなどのアクティブな趣味がある
という方にはピッタリのレンズかと思います。
多焦点レンズに近いレンズですが、多焦点レンズに見られる『コントラスト感度の低下』や『ハロー・グレア』といった副症状もほとんどないこともプラスかと思います。
白内障の手術でレンティスコンフォートについてお考えの方の参考になればと思います。
レンティスコンフォートだけでなく白内障の手術や眼内レンズについて分からないことや気になることがありましたら、何でも遠慮なくご相談ください。
どうぞよろしくお願いいたします。